金森 亨
クロスステッチ刺繍の魅力とは
更新日:2020年3月4日
以下は2016年4月に「とかるやのブログ」にUPした記事です。
先日、妻のクロスステッチ刺繍作品が渋谷東急百貨店本店に、展示されました。展示物の搬入など男手が要るからと、週末にかり出されたのですが、その際に展示会場を見る機会を得ました。会場には、妻のクロスステッチだけでなく、レザークラフトや編み物など、いろんな手芸作品が展示されていました。気に入ったものがあればその場で購入することもできます。

その中でクロスステッチは、大きな柱の陰に与えられたスペースにひっそりと展示されていました。せっかくだからもっと人目に付く場所がいいのにと思いましたが、そこはそこ、主催側の諸事情があって、やむをえないところなのでしょう。
それでも、見に来てくれる人が居て、数万円もする作品が売れたほか、小さなミニ額や飾りものなども買っていただいたようです。
クロスステッチの魅力はどこにあるのでしょうか。妻に語らせると一晩中かかりそうですが、僕なりに解釈してみました。
まず、誰でも出来るのに極めようとすると奥が深い。
刺繍の一種なので、布地の表と裏を針で行ったり来たりしながら刺していくわけですが、クロスステッチはその名の通り、布地の格子目に沿ってバッテン・バッテン・・・で、刺していくのです。
バッテンの大きさは作品によって様々ですが、一つの作品上では同じです。
つまり同じ大きさのバッテンを繰り返していくうちに作品が出来上がるという仕組みです。簡単な作業の繰り返しだから、誰でも出来るというわけです。
しかし、1メートル四方の大作となると大変です。一つのバッテンは簡単でも、それを一定のピッチで、バッテンの締り具合にむらが出ないように、注意をはらいながら進めていかなければなりません。これは根気の要る仕事です。
そんな苦労の末に出来上がった大作を壁にかけると、それはもうバチカン美術館の長い廊下にかけられている大掛かりなタペストリーとなんら遜色ありません。庶民の家の殺風景な壁だって、クロスステッチの大作を一枚かけるだけで、たちまちベルサイユ宮殿の鏡の間のように変身させることができるのです。

さて、単純作業を繰り返す仕事なら機械でできるのではないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。
現に、刺繍ができるミシンも売っています。
しかし、クロスステッチは仕組み上、機械化が不可能な世界です。人が心を込めて一針一針刺していくしかありません。そのため、作品からは刺した人の手のぬくもりが伝わってきます。それもクロスステッチの魅力の一つかもしれません。
小さな子供のお弁当袋にクロスステッチが刺してあると、お母さんの愛情が伝わってきますし、そんな子供を見ると、幸せな家庭に育まれているんだなあと、その家族の様子を想像して微笑ましく感じることもあります。
他にも、たくさん魅力がありますが、文章が長くなってしまったので、またの機会にしましょう。
