貸借対照表の右下に「資本」があります。株主がおカネを出し合って、事業を起こすための元手にしています。事業経営はその元手、つまり資本を使って、土地や建物、工場設備を手に入れます。土地建物や設備は貸借対照表の左側にある「資産」です。資産が稼働すると費用がかかりますが、費用をかけて作った製品を売れば収入(売上高)を得ることが出来ます。
これをまとめると、資本と使って資産を成し、資産を使って利益を得る。これが会社の事業構造です。
最近、会社は人で成り立っている、人が居なければ何も始まらない、人こそ財産としきりに言われるようになりました。じゃあ、財務諸表でも人をそれなりに扱うべきでしょう。人は全ての事業経営の元手なのですから。
元手・・・?なら、人は貸借対表表の右下の「資本」なのか?その通りです。では、資本である人が成す「資産」は何でしょう。全部です。工場設備を作るのは人、建物を建てるのも人、土地を均すのも人・・・。でも全部を社員が作るわけにもいかないので、その多くをカネを出して買ってきます。買ってきたものはカネという資本が成したものです。
ただ、製品を作る為にどんな機械が要るか、どれくらいの土地が必要かなどよく考えなければなりません。考えてから買いに行くでしょう。カネが成した物は価格が表示されているモノだけであって、「考えた」事は貸借対象には計上されませんね。でもこの「考え」がなければ製品はできない。ただ機械を買い集めただけではだめなのです。「考え」は事業経営に欠かせません。
この考え、すなわち「人や組織の知恵」こそがもう一方のひ「資本」つまり人が形成する資産です。これを知的資産といいます。事業経営に欠かせないのに、人と言えば、人件費として費用計上されるだけで、貸借対照表の資本にも資産にも勘定されない。納得いきませんね。金額に換算できないからなので仕方ないといっていてはまともに事業の評価はできません。
財務諸表は仕方ないけど、事業を評価をする上では上をしっかりを頭の中に描いておかなければいけないのではないでしょうか。そこで図のように考えました。
貸借対照表の資本に、カネである資本金と並列して資本ヒトを計上します。資本を株主資本というのはもうやめましょう。株主の資本だけじゃないわけですから。左側の資産には会計上の資産の他に、知的資産を計上します。社長や社員が個人個人で持っている知恵や会社組織で共有できている知恵です。そこには、機械を扱うノウハウや社内ルール、取引先や顧客との関係や提携関係、感や度胸、士気や意欲なども含まれます。
損益計算書の人件費は計上せず、代わりに株主に支払われる配当金と同じ取扱いで社員や経営者に配当金を支払います。会社は株主だけのものではない。社員や経営者のものでもあります。もっとも、赤字の場合は無配に陥るリスクもあります。経営者や社員はそういうリスクも負って会社を自分のものにするのです。それではあんまりだとう場合は、配当の位置付けを調整する必要があるかもしれません。
以上の捉え方でもう一つ重要なことがあります。債務超過の考え方です。負債が資産を上回った場合、純資産がマイナスとなり、これを債務超過と呼びます。銀行は債務超過に陥った先を破綻懸念先と呼んで、融資しません。しかし事業評価において、人は財産。人を資本に加算することで債務超過とはならないケースも出てくるでしょう。もちろん資本に加算できるだけの資本としての価値がなければいけません。しかし、財務形式的には破綻懸念先であるけれども、そこに働いている人たちの可能性や経営者の知恵をきちんと活かして事業を再構築すれば決して債務超過ではないと評価する可能性が残されていることは大事です。
コロナ下、事業運営に従事する方々は大変です。金融機関もそれを知ってこの緊急事態に緊急融資で応じています。コロナ中はこれでいいかもしれませんが、コロナ後は環境変化に応じた工夫が必要です。その為には、人という資本を活かして、強い知的資産を備えなければなりません。
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