【米ドル】・・・対円
11月は往ったり来たりしました。
104円台半ばで始まったドル円は103円台前半まで下落した後、急反発して105円台半ばまで上昇しました。その後はこの振幅も小さくなり、多少の行き来がありつつも104円台前半から半ばという月初の水準で月末を超えています。
前半の上下材料はしばらく引きずりそうなので、ここに焦点をあててみましょう。
まず下落です。これは米選挙を受けたものです。バイデン氏かトランプ氏かというより、同時に行われた上下院選挙の結果捻じれが残りそうだという点に対する懸念材料がドルを売らせました。議会が捻じれると政策決定が進まず、コロナ対策も停滞するのではないかとの心配から長期金利が低下し、日米金利差縮小懸念からドルが売られたのです。
次に急反発について。大統領も議会もその決着を見るまではまだ時間がかかるとの見方のなか、対策を気にしていた当のコロナ対策は、ワクチン開発に関わる良いニュースから対策遅れの懸念を払拭するようにドルが買い戻されたのです。
10月は軟化しました。
105円台半ばで始まったあと、財政政策への期待から長期金利が上昇してドル円も買われ一時106円台を回復しました。
しかしその後は欧州での新型コロナウイルス感染再拡大、米大統領選挙の予想でバイデン氏とトランプ氏の支持率差が縮小していることによる不透明感から弱含み、105円台まで下落したのち104円台半ばで月末を超えました。
11月の米大統領選はバイデン氏の勝利となる中、FRB議長が追加施策を示唆すると金利低下予想からドルが103円台前半まで売られましたが、その後はワクチン開発期待から株価とともに米ドル買いが進んでいます。
【ユーロ】・・・対米ドル
11月は買われました。
月初1.16台前半~半ばの水準で始まったあと、米選挙で議会の捻じれが解消されずコロナ対策がなかなか決められないのではないかとの懸念から米長期金利が下がり1.18台後半まで強含みました。
その後は一旦1.17台後半まで売られる場面がありましたが、それもわずかで、中旬以降は一貫して上昇し続け、1.19台前半まで伸びて月末を超えました。
【今後の短期~長期予想】
ドル円 ・・・
上に書いた材料はこれからも短期・中期の相場を左右しそうです。
一方で、根の深い材料を円とドルの両方に関してあげることが出来ます。
まず円です。コロナ禍の影響は日本でも大きく、実体経済が停滞すると再びデフレ圧力が強まります。強まると実質金利が上昇して高金利通貨が高くなるとの原理から円高に振れる可能性があります。もっとも、コロナ禍の後は復興需要からインフレを予測する向きもあり、どちらへ転ぶかはまだわかりません。
次に米ドルです。これもコロナ禍の影響です。米FRBのスタンスはこの夏から明確です。インフレ目標を上に対して柔軟に対応し、雇用の目途がつくまで金融緩和を維持するという強い意志を前面に押し出しました。株価最高値を連日更新するほど市中の資金量も増えています。これに加えて、上院の結果(2021年1月までわからないとされている)が共和党過半数となると捻じれが現実のものとなって、頼りになるのは金融緩和しかないとの見方が強まるでしょう。緩和圧力はドル売りです。
以上から、ドルを支える要因は短期・中期的なワクチン効果のニュース、ドル売り材料は、同じく短期・中期的な議会ねじれと、根の深い上記2材料ということになって、ドル安円高が予想されます。
ユーロドル ・・・
欧州復興基金合意や英国の対EU通商交渉継続などの好材料が重なった先々月と異なり、10月は新型コロナウイルス感染再拡大が深刻化していること、これを踏まえて欧州中央銀行(ECB)が利下げするとの観測があることから、ユーロは米ドルに対して弱含みました。しかし、11月には再び一方的に上昇しました。
もちろん、欧州復興基金の進捗とその将来にあるEUの財政統合は長期的な好材料として見ておく必要があるでしょう。短期的には英国の対EU交渉が進んでいるとの材料もあります。合意までの課題はありますが、少し前のように交渉破綻するとの懸念は遠ざかったように思います。
しかし、ほかにユーロドル相場はドルに対するユーロ価格なのでドル単独の材料にも影響を受ける点を忘れてはなりません。ドル円で書いたように、根の深いドル売り圧力があり、これが注目されるたびにユーロは他通貨に対してはいざ知らず、ドルに対しては買われる場面があかもしれません。
【短期的な材料(1ヶ月前後)】
1. 米FOMCの金融政策方針の変化:コロナウイス対策としての利下げ状況~金利差縮小から円高
2. 新型コロナウィルス対策からの経済再開 :流動性確保緊急性低下からドル売り、円など他通貨買い
3. 新型コロナウイルスワクチンの開発状況:期待が高まるとリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り
4. 新型コロナウイルス感染爆発によるドル流動性需要の高まり : リスク高いほどドル高
5. 欧州中央銀行(ECB)の金利政策:コロナ感染再拡大への対応として利下げするならユーロ安
【中期的な材料(数ヶ月)】
1. 新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。
2. 米大統領選挙でバイデン氏勝利するも、議会ねじれから財政出動できず、代わりに低金利策がとられることによって日米金利差縮小しドル安円高
3. 米中貿易戦争や政治リスクの高まりに伴う世界景気減速懸念:懸念高まれば円買い材料に
4. 米政府が注目する円の実質実効レートの動向 :貿易赤字解消を目的に米が割安円を指摘
【長期的な材料(数年)】
1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。
2. 米大統領に就任するバイデン氏の政策により増税、財政出動が多くなれば長期金利が上昇して米ドル堅調。
3. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。
4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。
5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)
以上
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