• 金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2020年5月末現在)

【米ドル】・・・対円

5月は小幅上昇しました。

3月の乱高下の後の4月は落ち着き、落ち着いた中でも小幅下落(ドル安円高)しました。5月はこの小幅下落と取り戻すように、小幅上昇(ドル高円安)しました。

月初、107円近辺で寄り付き一旦106円まで下落しましたが、8日に発表された米雇用統計が大恐慌以来の失業率14.7%を記録したのに翌営業日11日には107円台半ばまで戻しました。不思議です、コロナ影響を想定していたため発表数字がよそうより良かったからでしょうか。

その後は日銀が臨時の政策決定会合で追加策を発表したほか、米FRBへのマイナス金利政策への期待もあるなか、ドルが堅調に推移し、結局107円台半ばで月末を超えました。背景には、➀緩和措置からリスクマネー投入機運が少し戻ってきたことと、新興国から引き揚げた資金がドル確保に使われていることの二面あると思います。

6月に入ってもこの動きが継続し、6月5月現在では109円台半ばまでドルが買われています。

【ユーロ】・・・対米ドル

5月は後半に伸びました。

月初1.09台半ばで始まった後に下落し、月央までは1.07~1.08台をうろうろする動きでした。下落した背景には、2015年から欧州中央銀行(ECB)が実施してきた資産買入れによる金融緩和策に関し、独連邦裁判が違憲判決を下したことがあります。緩和策が違憲とされたことで、今後の刺激策に制約が生じ、将来のユーロ回復に不安がでてきたということです。

しかし、下旬18日、独メルケルと仏マクロンがコロナ対応の景気策として復興基金(5,000億ユーロ)の設置を提案したことから、急に買われはじめ、結局1.11台まで戻して月末を超えました。その後6月にはいって4日には1.13台までつけています。

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

新型コロナウイルス感染拡大が少し落ち着いて、各国で経済活動が再開されました。これを踏まえて、次の3つの材料を吟味していく必要があります。

➀ リスク回避先としての円買いはどうか。

② 流動性確保を目的としたドル買いはどうか。

③ 各国金融政策と金利動向はどうか。

まず、経済活動が再開されるとリスクをとる動きが再開され、リスク逃避先の円が売られる一方、流動性確保の緊急性が和らいでドル買いが少なくなります。

円もドルも売られるならドル円相場はどうなるのでしょうか。極端に一方方向に走ることはありませんが、これまでどちらかというと流動性確保の緊急性の方が高かったことを考慮すると、差し引きネットで僅かながらドル売り円買いに向かうのではないでしょうか。

次に、金利動向です。コロナが明確に収束して世界経済が回復の基調に乗るまで米FRBが引き続き緩和措置を継続するため、日銀がいくら追加緩和を講じて日米金利差が縮まらないようにしようとしても無駄な抵抗です。中期ではドル売り円買いが進むと思われます。

上記2点から、中長期的にはドル安円高。ただし、コロナ感染の二次拡大が発生して再び新興国から資本が逃避するようになるなら、短期的にドル高圧力も残るでしょう。

ユーロドル ・・・

5月18日に独メルケル首相と仏マクロン大統領が共同で提案した復興基金設立はちょっとした出来事です。長年取り組んできたユーロの根本課題の解決へむけた一歩になる可能性があるからです。

ユーロは通貨を共有し、欧州中央銀行(ECB)も機能して金融政策が統合されましたが、財政は各国に分散され夫々の国が一定の自由度を持ったままです。統一した金融政策を行うと都合の悪い国は財政に逃げるため、ユーロ圏の経済運営が統一性を欠く。つまりはユーロがいつまでたってもまとまらないという状況が解消されません。

金融と財政が統合されてはじめて経済政策の効果が発揮されるのです。

今回の復興基金は欧州委員会が発行する債券で資金を賄いますから、加盟各国が一定率の負担を負うことになります。一方で基金から受ける支援は窮境に陥る国に傾斜して送られますから、受け取り超の国と負担超の国が出てくるという事になります。

これが容認できないからいままで財政が統合できなかったわけですから、これがスムーズに設立されるなら、この一角を溶かすことができ、金融財政統合の一歩になるというわけです。このことは超長期的なユーロを占う材料となります。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 新型コロナウイルス感染爆発によるドル流動性需要の高まり : リスク高いほどドル高

2. 新型コロナウィルス対策からの経済再開 :流動性確保緊急性低下からドル売り、円など他通貨買い

3. 米FOMCの金融政策方針の変化:コロナウイス対策としての利下げ状況~金利差縮小から円高

4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向→心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルス対策としての各国の金融財政政策の効果とその後の影響 :民間への支給供給締め出し効果から金利上昇し、日米金利差拡大するならドル高

2. 米大統領選挙:新大統領の経済政策に注目(貿易、財政など)

3. 米中貿易戦争や政治リスクの高まりに伴う世界景気減速懸念:懸念高まれば円買い材料に

4. 欧州中央銀行ECBが金融政策の検証を開始(2020年2月)、検証結果が出される今後の金融政策スタンスに注目

【長期的な材料(数年)】

1. 新型コロナウイルス終息後の国際経済相互依存リスク回避の動き:対外直接投資や貿易取引縮小し為替裁定取引縮小するため金利差等による投機行為が少なくなり、より実需に影響を受けるように

2. 今後の政治情勢で、国際的な分断が進行するなら、貿易の委縮に伴って世界経済が停滞し、円キャリー取引巻き戻しによる円高

3. トランプ政権の経済政策の好効果後の悪影響や反動(保護貿易によるコストプッシュインフレ、大型減税に財政圧迫)の相場への影響

4. 英のEU離脱後の状況:経済的ダメージが予想より小さければEU体制に悪影響。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

6. 欧州コロナ対策復興基金の設立の行方 :超長期的にユーロの財政統合を占う

以上

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