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外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2020年8月末現在)

執筆者の写真: 金森 亨金森 亨

【米ドル】・・・対円

8月はあまり動きませんでした。

7月下旬に104円台まで売れたあとの戻りを受けて、8月は105円台後半で始ました。その後、月中までに107円近辺まで買われる場面があったものの、概ね105円台前半~106円台半ばの小動きに終始しました。

月中までの高値は、雇用統計などの米経済指標が市場の予想を上回る好結果だっためです。背景には、7月末、パウエルFRB議長が9月の会合で追加策を決定する可能性も示唆したことがあげられます。経済が長期に停滞することを懸念しての示唆であったので、指標の好結果は逆にドル買いを促したのです。

しかし、その後は株高から他通貨へのドル投が進み、107円の壁を突破できず、小幅な動きに終止しました。

【ユーロ】・・・対米ドル

8月は高値維持でした。

7月21日のEU首脳会議において欧州復興基金の創設が承認されると、一気にユーロ買いが進み、1.19台もつけた動きを受け、8月は1.17台後半で始まりました。

その後も一時2018年以来の高値である1.19台半ばをつけるなど堅調に推移し、1.19近辺で月末を超えました。

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

米FRBは下旬、改めて低金利政策維持を強調するようにコロナ対策をインフレに優先させると発表していることから、中期的には弱含む(ドル安円高)と思います。日米金利差が縮まるからです。そもそもインフレ通貨は減価するというのが為替の基礎理論。FRBがインフレの上振れを容認すると言っているのですから、ドルはインフレ通貨となり減価するというわけです。

インフレというと、長い間デフレに悩まされてきた日本経済はコロナ後にインフレになると予想経済学者が居ます。歴史上、インフレが高じた時期は大戦の後。理由のひとつに設備が破壊されて再構築需要が沸騰するという事情があります。コロナ後、サプライチェーンを再構築するというのがこれに似ていなくもない・・・ということです。

コロナ後はデフレ継続がインフレかについては学者の間でもまだ意見が分かれているようですね。

ユーロドル ・・・

欧州のコロナは終息にむかいつつあり、米国に先んじて経済が回復するのではないかとの見方が市場にはあるようです。ならば、欧州中央銀行(ECB)の政策スタンスも極端な緩和措置に拘る必要もなくなり、米ドルに対しては底堅く推移するのではないかと見通しが立ちます。

ただ、7月21日に合意した欧州復興基金創設で既に大きく買われていることから、1.2を超えてユーロ高になる可能性は小さいでしょう。むしろ、合意後の進捗状況が期待を裏切るような方向に進みそうになるリスクもあって、短期的には1.16~1.18の水準で推移するのではないでしょうか。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 米FOMCの金融政策方針の変化:コロナウイス対策としての利下げ状況~金利差縮小から円高

2. 新型コロナウィルス対策からの経済再開 :流動性確保緊急性低下からドル売り、円など他通貨買い

3. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向→心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

4. 新型コロナウイルス感染爆発によるドル流動性需要の高まり : リスク高いほどドル高

【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。

2. 米大統領選挙:新大統領の経済政策に注目(貿易、財政など)

3. 米中貿易戦争や政治リスクの高まりに伴う世界景気減速懸念:懸念高まれば円買い材料に

4. 米政府が注目する円の実質実効レートの動向 :貿易赤字解消を目的に米が割安円を指摘

【長期的な材料(数年)】

1. 新型コロナウイルス終息後の国際経済相互依存リスク回避の動き:対外直接投資や貿易取引縮小し為替裁定取引縮小するため金利差等による投機行為が少なくなり、より実需に影響を受けるように。

2. 今後の政治情勢で、国際的な分断が進行するなら、貿易の委縮に伴って世界経済が停滞し、円キャリー取引巻き戻しによる円高

3. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。

4. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

以上

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