• 金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2021年10月末現在)

【米ドル】・・・対円

10月は9月に引き続いて円安に振れました。

月初111.00近辺で始まり、一旦ドルが少し弱含んだ後すぐに反転し、月半ばに114円を超えて114円台後半にさしかかるとこまで買われました。その後は113円半ばから114円近辺の間を往ったり来たりしながら結局この水準のまま月を超えました。

要因は米FRBの金融政策の正常化にあると見られています。インフレリスクを警戒したFRBが金融緩和策としての資産買入を徐々に解消する、いわゆるテーパリングを実施する方向を固めたのです。金融緩和策を解消すれば、金利は高くなって円金利との差が開くことから金利相場の観点からドル高円安に動くはずだとの市場の読みがそのまま現実相場に反映されたと言えます。

あとは、その進み具合と、その後の金利引き上げに市場の関心は移っており上記は既に相場に織り込まれていると見た方がいいでしょう。


【ユーロ】・・・対米ドル

10月は底を打ちました。

底を打ったというのはちょっと大げさな表現でした。具体的には、数ヶ月の中期でみると、今年6月の1.22をピークに毎月下がり続けていたのが、10月には1.15の前半を底値に下げ止まって1.15の半ばから1.16近辺の間でうろうろしていたということです。

10月だけでみると、1.15台後半で始まった後、テーパリングを見越したドル高につれて売られ、半ばに一旦1.15の前半まで弱含みました。

しかし、その後は値を持ち直し、後半は上記のように往ったり来たりして結局1.15の半ばで月末を超えました。

下げ止まった理由として考えられるのは、前月までの下げの要因が相場に織り込まれてこの水準で着したことによります。

· 1つは、欧州中央銀行(ECB)理事会で政策の正常化(緩和措置の出口)がなかなか見えない事。市場の期待を裏切って出口(PEPPなど)を具体的に示さないので金利上昇を期待していた向きがユーロを売ったのです。

· もう一つは米FOMCのテーパリングがドル買いユーロ売りの要因になっていましたが、これも前月までに相場に織り込まれ、これ以上のユーロ売りはポジションの異常な傾きにつながるのでこの辺りで着地しようとしたことでしょう。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

FRBのテーパリングに関わる材料は既に相場に織り込まれていると書きました。実際、11月はじめの米FOMCではそのことが正式に決定され、市場の期待を裏切りませんでした。相場はすでに次の材料を探しています。

次の材料は何かというと・・・、短期的にはドルの買いポジション調整がいつ来るか、中期的には経常収支や米経済動向、長期的にはインフレ率などです。順番に見ていきましょう。

· 短期材料の買いポジションは相当量摘みあがており、逆に円の売りポジションが相当程度積み上がっていることから、一気に解消されないまでも徐々に調整して次のステージに備えることになるでしょう。その為、現状の114円近辺の水準を天井にこれ以上のドル高円安は考えにくいという予想になります。

· 中期材料の米経常収支では、赤字が膨らんで赤字国の通貨は減価するという国際収支論から米ドルが弱含んでいくことが予想されます。

· 長期材料のインフレでもインフレ通貨が減価するという購買力平価説からドルの下落が予想されます。

いずれをとってもドル下落という予想が成り立ちますが、インフレについて金利動向とインフレについては、米国が先行しつつも、欧州や日本もいずれこの後についていくことになるでしょうから、ドルの下げ圧力は限定的とみられます。


ユーロドル ・・・

欧州中央銀行(ECB)の理事会が10月28日に開かれました。

相変わらず、政策正常化に向けた方向性はあいまいなままですが、PEPP(パンデミック金融資産購入措置)は来年3月の終了を示唆しました。ただ、これはパンデミックに関わる措置ですから、まだ本筋の資産購入措置は続いています。

注目すべきは、現状のインフレ傾向についてECBがあくまでも一時的あるという見解を持っていると言事です。ということは、一時的なのだから今はインフレを心配して緩和措置を解消したり金利を上げたりするつもりはないということになります。

ならば、ユーロはドルに対して今後も売られ続けるのではないかとの予想が成り立ちますが、そうは問屋が卸さない。何故なら、既述のように当の米ドルにも上げ要因がないからです。

じゃあ、当面は今の水準のまま推移するのかというと、概ねそうだと思います。短期では1.15~1.18の水準で、それ以降の中長期ではドルの下げ要因から多少の強含んで1.15~1.20があるかもしれません。



【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 米FOMCの金融政策:11月FOMCはテーパリング開始で決定。その後2022年央に終了して利上げする動きとの市場予想を変える材料が出されるか。

2. 米インフレの予想の変化:インフレそのものは中長期材料だが、その予想は短期の相場変動要因。

3. 岸田政権の経済運営方針が発表された(2021.11.04)が、日銀の異次元緩和策についてはまだ不透明。

4. 新型コロナのブレイクスルー感染拡大:特に欧州で心配される。


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 米FOMCの金融政策:11月FOMCはテーパリング開始で決定。その後2022年央に終了して利上げする動きとの市場予想を変える材料が出されるか。

2. 米インフレ動向 :長期化するならドル安、ユーロ・円高。

3. 米国の経常収支赤字:米バイデン政権の政策により総需要拡大して貿易収支、経常収支ともに赤字幅が拡大するなら、ドル安圧力。

4. アフガニスタン情勢の難民などの混乱:欧州が影響受けやすく、ユーロの信用度に悪影響を及ぼす可能性。

5. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による世界景気減速懸念:懸念高まれば中期では円買い材料に(長期では異なる)


【長期的な材料(数年)】

1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。

2. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。

3. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)

4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上


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