• 金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2021年2月末現在)

【米ドル】・・・対円

2月は円が安くなりました。

105円近辺で始まったあと、一旦104円台半ばまで弱含む場面がありましたが、中旬にかけて上昇し、17日には昨年秋以来初めて106円台を回復しました。その後は再び104円台まで下落したあと月末にかけてじりじりと円が売られ、107円近くの高値圏で月末を超えました。

ドルが高くなったというより、円が安くなったというべきでしょう。リスクを警戒していたむきがリスクチャレンジする空気(リスク・オン)に変わり、リスク退避先である円から引き揚げていったからです。その背景にあるのは米バイデン新政権の経済刺激策への期待です。財源の確保はともかく、2兆ドルを公約にあげていました。


【ユーロ】・・・対米ドル

2月はあまり動きませんでした。

普段ですと、円の対ドル相場、ユーロの対ドル相場は、ほぼ平行している、つまりドルの動きが円やユーロの相場の主役となるケースが多いのですが。2月は円がドルに対して一方的に弱かったのに対しユーロはそうではありませんでした。

その理由は、市場がリスク・オンに傾いてリスク退避先の円が売られた事情にあります。だからユーロはユーロの事情で対米ドルでは円とは異なった動きとなりました。

月初1.21台前半で寄り付いたあと、1.19台半ばまで弱含みましたが、その後は回復し、1.20~1.21台の動きを中心にして、1.20台半ばで月末を超えました。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

注目すべきは米長期金利です。米バイデン新政権のけいざい刺激策への期待から長期金利が上昇しています。財源の確保への不安から政府によるクラウディングアウトが起こるのではないかとの不安もこれに加わったかもしれません。1.3%を超えた後、下旬には1.6%台にまでなっています。これに対して、米FRBパウエル議長はしきりに緩和策継続を強調してバランスをとろとしています。実際、雇用統計はぱっとせず、まだまだ政策金利引き上げに戻る状況にはありません。

中期的には、以下の諸点を予想材料にして見守る必要があるでしょう。

➀ 長期金利の動向 :さらに上昇するなら日米金利差拡大からさらなる円安。

② FRBの緩和政策継続を占う米経済動向(特に雇用統計):長期金利上昇してもFRBが利上げを織り込む姿勢を見せなければドル高円安にも限界ある。

そして、米経済の回復が長期金利上昇を裏打ちできるようになれば、長期的にもドル堅調円弱含みが予想できます。

ただ、それはバイデン政権の刺激策の進み具合によります。議会は民主党が握っているものの、肝心な財源に不安が残ります。毎年夏になると必ず出る財政問題にも注目しておくべきです。


ユーロドル ・・・

コロナ終息状況とユーロ圏経済回復状況が中期的なユーロ相場予想材料ですが、特に後者を目的としたPEPP(パンデミック緊急資産購入プログラム)については、ドイツとイタリアなど南部のスプレッドの開きを考慮して進められているため、国債利回りの開き拡大が懸念材料でした。他方でラガルド欧州中央銀行総裁の多少タカ派的な発言もあって、経済回復への道はまだ長いとみられがち。

そこへ、期待されて登場したのがドラギ氏です。イタリアで誕生した同氏新政権には極右も支持している様子。ラガルド氏の前任として欧州中央銀行総裁を務めた実績もあって、欧州復興基金の活用など経済回復に力を発揮するだろうとの期待です。一定の成果を出して懸念されていた南部諸国の経済に良い兆しが見えるなら、ユーロ買いの材料となるかもしれません。PEPP効果も期待できるでしょう。


【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 米FOMCの金融政策方針の変化:コロナウイス対策としての利下げ状況~金利差縮小から円高

2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り

3. バイデン新政権の議会運営状況と積極財政政策の行方:進む兆しなら米金利上昇しドル高

4. 欧州中央銀行(ECB)の資産買入(PEPP)と金利政策:買入・緩和維持で短期ではユーロ買い


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。

2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り

3. バイデン新政権の積極財政が進むか否か:上下院は民主党主導だが大規模財政に批判も→進なら米長期金利上昇しドル高円安

4. 米中貿易戦争や政治リスクの高まりに伴う世界景気減速懸念:懸念高まれば円買い材料に

5. 日本の経常収支黒字拡大状況:拡大継続なら対円実需から円高


【長期的な材料(数年)】

1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。

2. 米大統領に就任するバイデン氏の政策により増税、財政出動が多くなれば長期金利が上昇して米ドル堅調。

3. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。

4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上

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