• 金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2021年7月末現在)

【米ドル】・・・対円

7月のドルは少し下落しました。

月初111円台前半で始まった後は、上下しながら次第に下落(円高)になり、月末には109円台半ばまで弱含みました。8月に入ってもドル安円高の傾向は続いています。

材料としては、以下の諸点があげられます。

まず、新型コロナウイルスの感染が再び拡大していることから、リスク回避に動いていること。ワクチン接種が進んでいる米国もこのところ接種率が頭打ち。特に共和党主導州でワクチン接種を敬遠する動きがあるとか。これにデルタ株の感染力が輪をかけているようです。

2つ目は、インフレ期待率が少し和らいで長期金利も落ち着いてきたこと。経済の回復力は高いものの、27日のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策現所維持が決められて、年末ごろのテーパリング(緩和を徐々に卒業する)を示唆していたにもかかわらず市場の反応が限定的でした。

これらを受け、結局ドル安円高のトレンドを維持したまま月末を超えました。


【ユーロ】・・・対米ドル

7月は低迷していました。

5月下旬に当面のピークである1.22の半ばをつけたあと6月は、1.18の半ばまでどっと下げましたが、7月はこの水準の当面の定着を確認するかのように、低迷し1.17の半ばから1.18の前半までを下ったり登ったりしていました。

「下ったり」の材料は、ECB(欧州中央銀行)の金融政策現状維持決定です。長期金利が低下してユーロも1.17台まで下げました。

「登ったり」の材料はドル安です。ドル円で説明したドル安材料で、ドルが円に対して下落するとユーロに対しても下落、つまりユーロ自身はドルに対して上昇したのです。

結局1.18の半ば・・・・という月初とあまり変わらない水準で月末を超えました。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

少し長い期間でみると、ドルは2020年12月のボトムから上昇し続け、2021年3月末に110円台半ばをピークアウトしたあと、108円近辺まで戻り、その後は再びじりじりと上昇して今度は7月月初にピークアウト。現状は6月半ばの水準にまで戻ったという状況です。

この間、相場を動かしてきたのは、もっぱら新型コロナです。

実はもっと長い期間でみると、リーマンショック以降の金融緩和で経済回復しつつあったので緩和策を徐々に卒業するテーパリングが進みかけていました。

緩和期には、日米金利差が縮んでドル安円高が進みましたが、テーパリングで米金利が上がるとドル高円安に転じます。

そこへ新型コロナです。世界は再び緩和策に戻りました。だから相場も再びドル安円高に振れはじめたのです。でも今度は少し事情がことなり、相場は日米金利差とともにコロナによるリスク回避先としての円買い場面もあり、両者が交錯するようにりました。

で、ワクチン接種進んでインフレが心配されるようになると、米長期金利が上昇してまたドル高円安となったが、コロナリスク回避から7月月初をピークに、またまたドル安円高に転じているというわけです。

総じて値動きは小さく、為替リスクが事業に影響することはなくなりましたが、この間マネーが膨張しているので国際的な資金循環の変化には注意しなければなりません。

今後の注目は、新型コロナ感染拡大状況のほか、米FRBのテーパリングの行方です。2021年1月にテーパリング開始するとの見方が多いようです。


ユーロドル ・・・

7月の動きにも表れていたように、ユーロドルの相場はユーロ固有の材料とドルの材料が交錯しながら変動しますので、両者を睨み、どちらが強いかを見極めなければなりません。

ユーロ固有の事情は2つあります。

  • 新型コロナワクチンの接種が進んで、経済活動を再開する動きがでてきた一方で、デルタ株の影響も心配されること。

  • ECB(欧州中央銀行)の政策スタンス。特に今回はフォーワードガイダンスで今後の利上げ条件として2%のインフレ率を明確にした点です。現状のユーロ圏経済の状況ではそのハードルは低くないという見方が多いようです。

一方のドルの材料はドル円の項目であげたものと同じです。つまり

  • 新型コロナ感染拡大状況のほか、

  • 米FRBのテーパリングの行方(2021年1月にテーパリング開始するか)


【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. バイデン政権が進める刺激策の財源確保 :見通しが立たない場合はリスクオフ機運からドル売り

2. 米FOMCの金融政策:雇用統計など好結果続けば徐々に緩和解除(テーパリング)し日米金利差拡大からドル高円安

3. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り

4. バイデン新政権の1.9兆ドル財政政策の進行状況:進む兆しなら米金利上昇しドル高(但し財源確保リスクに注意)

5. 欧州中央銀行(ECB)の資産買入(PEPP)と金利政策:買入・緩和維持で短期ではユーロ買い


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。

2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り

3. バイデン新政権の1.9兆ドル財政政策の進行状況:進む兆しなら米金利上昇しドル高(但し財源確保リスクに注意)

4. 欧州中央銀行ECBの金融政策スタンス:利上げ条件として2%インフレ率をさらに明確にした(2021年7月理事会)

5. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による世界景気減速懸念:懸念高まれば中期では円買い材料に(長期では異なる)

6. 米政府が注目する円の実質実効レートの動向 :貿易赤字解消を目的に米が割安円を指摘


【長期的な材料(数年)】

1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。

2. 米大統領に就任するバイデン氏の政策により増税、財政出動が多くなれば長期金利が上昇して米ドル堅調

3. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。

4. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)

5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

6. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上

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