【米ドル】・・・対円
9月は円安に振れました。
月初110円近辺で寄り付いた後、少しずつ下落(ドル安円高)しましたが、後半には一気に反転しました。前半の下落と後半の反転に分けてその要因を見ます。
まず、前半の下落要因は以下の2点です。
· 米雇用統計 : 非農業部門の雇用者数が市場予想を大きく下回る増加幅であったこと。
· 中国恒大グループの債務問題が表面化してみなリスク回避に動いたこと。
後半の反転要因は以下の2点です。
· 米FOMC(9月22日開催)で、11月のにもテーパリング(徐々に資産買い入れ額を縮小する)の開始を決定されることを示唆する声明が出されたこと。これに関連し、パウエルFRB議長は記者会見で来年半ばまでにテーパリングを終えるのが良いと述べ、来年後半には利上げされるのではないかとの観測をよんで、日米金利差の拡大からドル高の材料となりました。
· 中国恒大グループの債務問題に関し、中国当局がデフォルト回避に向けて措置を取るとの見方が伝わったこと。
相場は一時112円台に乗せるほど上昇し、111円台前半で9月を終えました。
なお、岸田氏が総理に就任したニュースは特段影響ありませんでした。
【ユーロ】・・・対米ドル
9月は下落しました。
月初1.18近辺で寄り付いた後、米雇用統計の発表を受けて1.19まで上昇しました。しかし、その後はほぼ一本調子で下がり続け、結局1.15台の中後半で月末を超えました。
一本調子で下げ続けた要因は、下記の2点です。
· 9月9日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会で、資産買入れの縮小はあくまでも否定され、PEPP(パンデミック緊急購入措置)を少しだけ緩めるものだと強調されたことから、市場からは金利の上昇が限定的だろうという見方となり予想をはずされたこと。これにより金利相場からユーロが売られました。
· 米FOMCの決定とこれに続くパウエルFRB議長の発言で、テーパリングが来年半ばに終了し、その後来年中に利上げが行らわれるのではないかとの見方が広がったこと。これはドル円相場に同じ方向で影響しました。
【今後の短期~長期予想】
ドル円 ・・・
米国ではFOMCが11月にも資産買入額の圧縮を決めるとの見方と来年後半には利上げに動くのではないかとの見方から、米国の金利はそれなりに上昇することが予想されます。
一方の日本では、さきごろも日銀の黒田総裁は2%の物価上昇を目指すスタンスは変えず、金融緩和を継続すると述べるなど、金利水準は低いまま推移するとの材料しかありません。
この両方を考慮すると、金利相場からは当然米ドル高円安の進行が予想されます。ただし、このシナリオを狂わせる、下記材料があるので、これも見守る必要があります。
· 米国バイデン政権の財政出動計画の実行により(議会でスムーズに通るとして)、総需要が拡大すると、既にコロナのリベンジ消費で膨らんでいる経常収支の赤字が拡大し、国際収支論からはドルが売られる。
· 一方、日本では日銀総裁の任期到来を迎え、継続する異次元の金融緩和措置への副作用を懸念する意見もちらほら目立つようになっていることから、岸田総理の就任を機に金融政策スタンスの修正が行われるかもしれないこと。修正なら緩和措置の出口が議論され、円高要因になります。
特に、2013年暮から続いてきた異次元金融緩和は金融機関を疲弊させ、当の金融機関が本業である金融仲介機能(預かった預金を事業者に融資する)をギブアップしていることが大問題です。当局は金融仲介機能ベンチマークを導入してなんとかしようとしていますが無理です。だって、融資業務は利益をもたらさないのですから。多くの銀行は、融資業務には頼らず、証券をからめた運用提案や、アドバイザリーに注力し、地域の商社を目座す方針を掲げるしまつ。これでは、事業再構築や事業開発に前向きの資金が流れず、経済はコンファインする一方です。
と、ちょっと興奮してしまいましたが、言いたいことは、金融政策スタンスが修正されて、金融仲介機能が復活し、資金が前向きに使われるようになると需給ギャップも埋まり、ファンダメンタルズ相場として一定の円高が期待できるかもしれないということ。
ユーロドル ・・・
欧州中央銀行(ECB)の金融政策スタンスの他に、ユーロが抱えていた材料として、①アフガニスタン情勢に関連して難民受け入れなどの混乱がユーロの信用に及ぼす悪影響と、②独の議会選挙の2つがありました。
このうち、独の議会選挙は事前予想通りの結果となったことで、短期的には相場への影響はありませんでした。ただ、連立の組み方にはいろんな見方があり、長期化しそうです。連立の組み方によってはこれまでの経済運営方針が変化する可能背がある為、注意して見守る必要があります。ポイントは以下の3点ほどでしょうか。
· 対中国スタンス :これまでメルケル氏は毎年中国を訪れ、経済協力関係を維持してきましたが、米中対立と経済安全保障からこのスタンスに疑問を持つ向きが現れています。修正するようならいままでの独経済力に影響が出て、それがユーロ経済全体に影響するかもしれません。
· アフガニスタンの難民対応 :難民に寛容であったメルケルとは異なる対応になる可能性があり、懸念されていた難民による独経済への悪影響がすこしだけ和らぐ可能性ああります。
· 環境問題への対応 :緑の党との連立の可能性があり、環境問題にはこれまで以上に大胆に取り組む可能性があります。経済への影響は不透明ですが、環境対策を経済戦略に利用することは十分に考えられます。
【短期的な材料(1ヶ月前後)】
1. 米FOMCの金融政策:11月のFOMCに注目~テーパリングのが2022年央に終了して利上げする動きとの市場の見方に変化を与えるか。
2. バイデン政権が進める刺激策の財源確保 :見通しが立たない場合はリスクオフ機運からドル売り
3. 岸田新総理の経済運営方針の表明 :日銀の異次元緩和策の継続が修正かへの方向が見えるような発現があるか否か。
4. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り
【中期的な材料(数ヶ月)】
1. 米FOMCの金融政策:緩和解除(テーパリング)が2022年央に終了して、2022年内に利上げする動きが出るか否か。
2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り
3. 米国の経常収支赤字:米バイデン政権の政策により総需要拡大して貿易収支、経常収支ともに赤字幅が拡大するなら、ドル安圧力。
4. バイデン新政権の財政政策の進行状況:進む兆しなら米金利上昇しドル高(但し財源確保リスクに注意)
5. アフガニスタン情勢の難民などの混乱:欧州が影響受けやすく、ユーロの信用度に悪影響を及ぼす可能性。
6. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による世界景気減速懸念:懸念高まれば中期では円買い材料に(長期では異なる)
【長期的な材料(数年)】
1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。
2. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。
3. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)
4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。
5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)
以上
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