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執筆者の写真金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2022年1月末現在)

【米ドル】・・・対円

1月は行ったり来たりしました。

月初海外では115円台前半で始まり、東京は1日遅れて4日から始まりましたが、いきなり116円台の前半のドル高水準をつけました。2017年以来の高値です。背景にはやはり米FRBの利上げ観測がありました。利上げされると日米金利差が拡大してドル高円安となるわけです。

しかしその後、月央開催の日銀政策決定会合で、日本もこれに続くのではないかとの報道に、今度は逆に113円台半ばまで円が買われました。

その後は、黒田総裁がこれを明確に否定し、かたくなに異次元緩和に固執する考えをしめしたことや、景気よりもインフレ対応を優先させるFRBの姿勢が見えてくると、115円まで戻し、結局115円近辺で月末を超えました。


【ユーロ】・・・対米ドル

1月は総じて売られました。

月初1.13台後半で始まり、米経済の好調な勢いが指標に表れず、FRBのタカ派姿勢もいくぶん弱まるのではとの見方の中、一旦は1.15近くまで値を上げる場面がありました。

しかし、ロシア・ウクライナ情勢が緊迫度を高める中での地政学リスク、デルタ株に続くオミクロン株感染の急拡大に、社会機能が失われ経済活動どころではなくなっていること、26日の米FOMCの内容がやっぱりかなりタカ派てきであったことなどから、1.11台前半まで値を下げ、結局1.12台前半で月末を超しました。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

1月25日付日経新聞の経済教室は興味深い内容でした。「今のドル高円安はオーバーシュート局面であり、いずれ円高への揺り戻しが起きると判断する」という内容です。過去、巨額の貿易黒字を維持した時期には円が買われました。輸出の変わり金を円に換える実需があるからです。為替相場の国際収支論です。今は貿易収支は赤宇だが経常収支が大きく黒字なので、国際収支論からすれば、円高であるはずなのに、日米金融政策スタンスの違いから多少オーバーシュウト気味に円安に振れすぎているということでしょうか。

ただ、こうも言っています。経常黒字でも、中身は所得収支なので、この黒字は海外債投資に向けられることが多いから円買いは依然ほどではないと。

統合して考えると。

短期的では、米FRBの利上げに伴ってドル高円安。

中期では、米専門家も指摘するように、大規模な利上げに耐えるほど米経済は好調ではなく、利上げ姿勢は少し緩み、日本でも長期金利が上昇しつつあることから、ドル高円安も一服。

長期では、日経経済教室の竹中正治教授の指摘のとおり、円が買われる局面へと進む。


ユーロドル ・・・

当面のユーロの下押しリスクは、①ウクライナ情勢、②オミクロン株、③エネルギー価格高騰などのユーロ圏経済への影響。

このうち、オミクロン株は、まず英国でピークアウトした模様であり、EU内でもピークアウトするか、共存できると判断して経済活動への規制を緩めるかすると考えられることから、リスク度合いは限定的。

エネルギー価格高騰はリベンジ消費に伴う需要の過熱からくるもので物価もこれにつれて高い水準になっていることから、インフレ対策として欧州中央銀行(ECB)が利上げに進む可能性があり、逆にユーロを押し上げる可能性さえある。

問題はウクライナ情勢。これは外交がどう機能するか全く見えず、相場を動かすファクターとしても捉えにくい。

総合して考えると、ウクライナ情勢がなるように着地して相場への影響が限定的という前提では中期的はユーロが米ドルに対して底堅く推移。ただし、ウクライナ情勢が着地しない状況が続くなら地政学リスクから弱含みで推移。


【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 米FOMCの金融政策:2022年は早期に利上げ実施し、インフレ対策を優先させる姿勢に変化あるか。

2. コロナのオミクロン株による感染再拡大:まだ不透明だが経済への影響が大きいとリスク回避の円買い。但し以前ほど円のリスク回避機能は働かない。

3. ウクライナ情勢:地政学リスクとしてユーロに影響。

4. 米経済指標 :大規模な利上げに耐えられるか。不安あれば米ドル売り。


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 米インフレ対応状況と米経済指標 :利上げ判断の一つとして注目。

2. 日銀総裁の任期到来と、その後の金融政策スタンス:現状の異次元緩和策を収束させるなら、円買い。

3. 原油価格とOPECの生産方針 :現状の各国経済の下押し要因の一つとして注目。増産に応じるなら中期相場に影響。

4. ウクライナ情勢 :外交や政治の動きによっては中長期の相場ファクターになる。


【長期的な材料(数年)】

1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。

2. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。

3. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)

4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上

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