• 金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2022年4月末現在)

4月も大きく円安になりました。

大きく円安に振れた3月に引き続いて4月も大きく円安が進行しました。月初121円台後半で始まり、ほぼ一本調子でドルが円に対して買われました。

まず、米FRB理事が0.5%の利上げに言及したことや日銀黒田総裁の発言を受けて13日に20年ぶりとなる126円台までドルが買われ、その後20日には130円目前まで上昇(円安)しました。

その後は、株が売られてコロナ封鎖が続く中国や世界の経済先行き見通しに少しの不安材料が見えたことから米長期金利が低下兆候を見せたため、一旦127円の水準までドルが売られましたが、月末28日の日銀政策決定会合の結果、円安が加速してあっさり130円を超え131円台前半を付けました。月末は少し戻して引けました。


【ユーロ】・・・対米ドル

4月は大きくユーロ安になりました。

3月のドル円が一本調子でドル高に振れたのと異なり、ユーロドルはほぼ横ばいでした。それが、4月ではドル円と同じようにユーロドルも一本調子でユーロ安になりました。

月初、1.10台前半で始まった後、米FRB理事の利上げ言及などにともなってユーロが下落しましたが、欧州中央銀行(ECB)の理事会で金融政策現状維持が決定されたことや、早期の利上げが示唆されたことなどを受けて、一旦小康状態になりました。

しかし、下旬になるとウクライナ情勢の悪化と抗争長期化を懸念されたほか、ロシアからのエネルギー調達不安からユーロ圏経済見通しが悪化したことをうけて再びユーロが売られ、月末には1.05を割り込む水準まで下落しました。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

短期ではドル高円安、中期でもドル高円安、超長期ではドル安円高と予測。

このところ、ドル円相場の材料としてもっぱら日米金融政策のスタンスの違いに着目されています。すなわち、米FRBはインフレに対応するため利上げに踏み切っているのに対し、日銀は相変わらず異次元緩和を継続し、長期金利が0.25%になると連続の指値オペを実行するなど、その姿勢は正反対です。

米インフレの背景にあるのはロシアへの経済制裁に伴う輸入インフレですから、その外部環境は日本でも同じです。しかし、日本はまだ2%近辺にあるのに対して米国では相当深刻であるのため米FRBはおしりに火がついているという事情の違いがあります。利上げのテンポも、いつもは0.25%刻みで引き上げていくのに0.5%の大胆な引き上げもみられます。

このスタンスの違いがドル円相場の急上昇の要因ですが、それ以外にも構造的な要因があります。

一つは国際収支説に基づくものです。国際収支が黒字の場合、獲得した外貨を円転するため円買い実需が発生します。貿易決に使われる外貨の大半はドルなので、この場合ドル売り円買いが進んで円高になるわけです。

資源価格が高騰して貿易収支は大きく赤字となり、それを埋め合わせる所得収支は黒字でもなかなか円転する動機につながらないので、上記の逆、つまりドル高円安が進むのです。

もう一つ構造的な要因があります。購買力平価説に基づくものです。インフレ通貨はデフレ通貨に対して減価します。あたりまえですが、同じモノを買うのにインフレ通貨建て価格は上昇し、デフレ通貨建て価格は下落します。同じ価値なのに価格下落するということはそれを測る通貨の価値が高くなるからです。米国は超インフレで日本ではせいぜいインフレになっても2%程度。だから、購買力平価説に従えばドル安円高になります。

金利平価説ではドル高、国際収支説ではドル高、購買力平価説ではドル安。

一体どっち?それを分けるのは予測期間です。金利平価説は短期(数ヶ月)、国際収支説は中期(1~5年)、購買力平価説は超長期(数十年)。

だから短期ではドル高円安、中期でもドル高円安、超長期ではドル安円高と予測できます。


ユーロドル ・・・

先月書いたように、当面はウクライナ情勢を材料にして底をはいまわる展開が続きそうです。

フランス大統領選挙でマクロン氏が再選されたことで、EUのウクライナやロシアへの対峙の仕方に変更がないことが明らかになりました。ということは、ロシアへの経済制裁も継続され、ロシアからのエネルギーをはじめとする資源調達も困難なままですから、ユーロ圏経済にとっては難しい局面が続くことになります。ユーロ圏経済へのファンダメンタルズ面からユーロは弱いまま。

ECBの金融政策方針も緩和政策の正常化(緩和政策の出口)を進めようとすると経済への悪影響が心配されるので思うように勧められず、米との金利差が開く一方なので、金利平価面からもユーロは弱いまま。

当面の判断材料の両方でユーロが弱いままなので、当面は底を這いまわるしかありません。


【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. ウクライナ情勢:長引くとエネルギーを依存するユーロにとって売り材料、資源高を通して円にも売り圧力。

2. 米FOMCの金融政策:利上げ実施状況と大胆な利上げ幅調整が、円売り圧力・ユーロ売り圧力になる。

3. 米経済指標 :大規模な利上げに耐えられるか。不安あれば米ドル売り。

4. コロナのオミクロン株による感染再拡大:まだ不透明だが経済への影響が大きいとリスク回避の円買い。但し以前ほど円のリスク回避機能は働かない。


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. ウクライナ情勢 :終結の形によっては、中期的にも影響。

2. 本邦経常収支:特に貿易収支の悪化は中期的な円売り圧力。

3. 米インフレ対応状況と米経済指標 :利上げ頻度と利上げ幅の判断の一つとして注目。

4. 原油価格とOPECの生産方針 :現状の各国経済の下押し要因の一つとして注目。増産に応じるなら中期相場に影響。

5. 日銀総裁の任期到来と、その後の金融政策スタンス:現状の異次元緩和策を収束させるなら、円買い。


【長期的な材料(数年)】

1. ウクライナ情勢 :妥協と伴うかロシア経済破綻か終結がの形によっては、長期に影響。

2. 日銀総裁の任期到来と、その後の金融政策スタンス:現状の異次元緩和策を収束させるなら、円買い。

3. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。

4. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)

5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

6. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上


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