【米ドル】・・・対円
7月はピークを付けた後、円高方向へ進みました。
月初135円台後半で始まったあと中旬に140円目前までドルが上昇しました。ドル高材料は、米雇用統計と消費者物価指数です。毎月上旬に発表される米雇用統計は良好の場合は景気情報を意味するので金利上昇の原因になります。今月は市場予想を上回り、これが金利とドルの上昇要因となりました。
もう一つは13日発表された消費者物価指数です。前年比9.1%というニュースでも話題なったほどの上昇率だったので、これもFRBの利上げ支持材料となってドル高を促しました。
しかし、その後は相次ぐ利上げが景気後退の要因になるのではないかと不安からドルが売られる展開に転じ、結局133円台前半までドル安円高となて月末を超しました。
【ユーロ】・・・対米ドル
7月はパリティを割り込んだあと持ち直しました。
1.04台前半で始まったあと、物価高への社会不安やロシアの天然ガス供給遮断への不安から値を下げ、中旬には2002年以来のパリティを割り込む状況となりました。
パリティとは€1.00=US$1.00の水準のことです。もともとユーロは1999年1月に導入されときは€1.00=US$1.1743で、その後下落して2000年台はじめにUS$1.00を割り込んだ後、盛り返してきました。今、その時の水準まで落ち込んでいるということです。
中旬以降はニュースでも話題に上ったように欧州中央銀行(ECB)が大幅な(50ポイント)利上げを決めた事から、値を戻し、結局1.02台の前半で月末を超えました。
【今後の短期~長期予想】
ドル円 ・・・
FRBの利上げ速度をにらみながらドルが買われたり売られたりしています。ここ数ヶ月の急激な円安と先月わずか数週間での急激な巻き戻しの大半は材料を読んだ投機行為による結果です。
本当は為替相場は貿易決済や購買力などの実体経済を反映して上下するものですが、当面みんなが注目している材料は金利なので、FRBの利上げ速度に注目が集まっていて、そのような実態経済からの判断は後回しになっています。
しかし、投機はいつか利食いしなければなりませんので上下しながら中長期的には実体経済を反映する水準に収斂していくはずです。では、実体経済からみた相場はどうでしょう。
· まず貿易決済です。経常収支の収支尻のうち決済されるものの代表が貿易ですが、これはエネルギーなどの高騰などあり当面は赤字。赤字は円安要因なので、中期的には円安
· 次に購買力。もっと長期的には、貿易などの経済活動を通じて購買力に収斂するという理屈なので、9%の物価上昇率となっている米とたかだか2%の日本ではインフレ率の格差は歴然としています。インフレ通貨は減価する理屈から長期では円高。
短期では、投機筋の円売り持ちも巻き戻しからドル安円高、中期ではドル高円安、長期ではドル安円高と予想します。
ユーロドル ・・・
短期的には市場の注目材料が金利であり、その点では米FRBに追随しつつある欧州ECBのスタンスからして一定水準を維持する力はありそうです。
しかし、そのほかにはいい材料がありません。
· まずエネルギー問題です。ロシアからの天然ガス供給遮断リスクは当面続き、高いエネルギーを買わざるを得ない状況が続くと日本と同様み貿易収支の悪化を招きユーロ安の要因となります。
· 次に、南欧の財務問題です。長引く新型コロナの影響で疲弊していた経済に、ウクライナ問題が追い打ちをかけています。イタリアなど南欧諸国の国際スプレッドは拡大傾向にあり、かつてユーロ通貨不安材料となっていた南欧問題が再び持ち上がっています。
ほかにも、仕上げに踏み切ったECBの今後の利上げ速度は50ポイントずつで進むといわれ急速な利上げは欧州景気を後退させるリスクもはらんでいます。
短期中期的にも長期的にもドルに対するユーロ相場は明るい材料なく弱含むと予測。
【短期的な材料(1ヶ月前後)】
1. ウクライナ情勢:長引くとエネルギーを依存するユーロにとって売り材料、資源高を通して円にも売り圧力。
2. 米FOMCの金融政策:利上げ実施状況と大胆な利上げ幅調整が、円売り圧力・ユーロ売り圧力になる。
3. 米経済指標 :雇用統計などから米経済が大規模な利上げに耐えられるか判断。不安あれば米ドル売り。
【中期的な材料(数ヶ月)】
1. ウクライナ情勢 :終結の形によっては、中期的にも影響。
2. 貿易収支:エネルギー価格高騰して高値にとどまるなら、円やユーロの売り材料。
3. 米インフレ対応状況と米経済指標 :利上げ頻度と利上げ幅の判断の一つとして注目。
4. 原油価格とOPECの生産方針 :現状の各国経済の下押し要因の一つとして注目。増産に応じるなら中期相場に影響。
5. 日銀総裁の任期到来と、その後の金融政策スタンス:現状の異次元緩和策を収束させるなら、円買い。
【長期的な材料(数年)】
1. ウクライナ情勢 :妥協と伴うかロシア経済破綻か終結がの形によっては、長期に影響。
2. 日銀総裁の任期到来と、その後の金融政策スタンス:現状の異次元緩和策を収束させるなら、円買い。
3. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。
4. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)
5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。
6. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)
以上
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