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  • 執筆者の写真金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2022年8月末現在)

【米ドル】・・・対円

8月は円安が進みました。

月初133円台前半で始まった後、米製造業景気指数が弱かったことやインフレより景気後退を心配する向きが出てきつつあったことから、一旦130円台前半まで値を下げました。その後発表れた米消費者物価指数も市場予想を下回り、FRBの利上げもそろそろ一服かという見方から、133~135円の範囲で推移しましたが、その後は反転しました。

反転したのはやはりFRBの利上げスタンスです。

さらに市場が注目していたジャクソンホールでのシンポジウムでのパウエルFRB議長の発言(8/26)はきわめつき。各国が注目してるシンポジウムであるだけに、あまり極端な発言は避け、常識的な範囲におさめるだろうと見ていた市場を裏切り、あまりにきっぱりとインフレに立ち向かう姿勢を姿勢を示したので、みるみるうちにドルが買われ円が売られました。月末は139円まで伸ばし、本日9/2現在は140.10-20で推移しています。


【ユーロ】・・・対米ドル

8月は弱含みました。

1.02近辺で寄り付いたあと、ドル円の流れ同様、一旦はわずかに買われましたが、月央あたりから反落し、先月に引き続いて再びパリティ(US$1.00=€1.000)を割り込みました。

その後は、ジャクソンホールでのシンポジウムでの発言が材料となりました。パウエル米FRB議長の発言もありましたが、これより€にとってインパクトとなったのは、欧州の複数の中銀総裁の発言です。欧州中央銀行(ECB)の0.75%幅による利上げ可能性に言及したのです。これを受けて、€は再び1.000超を回復しました。

結局、1.00台の半ばで月末を超えましたが、9/2現在は再びパリティを割り込んでいます。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の発言を受けて、24年ぶりの円安まで進んだドル円はFRBのスタンスが変わらない限り、この円安水準で推移するものと予想します。

ではいつそのスタンスは変わるのかというと、インフレを退治することができたと確信が持てるまでということですが、市場ではFRBのスタンスは中間選挙を睨んだ思惑もあるとみているようです。

つまり外はウクライナ侵攻に向いていた政権は内政で一番困っているのが国民の物価高への批判なので、中間選挙を乗り切るためにもタカ派スタンスでいて欲しいというものです。

では中間選挙以降はFRBのスタンスも多少はハト派になって円安は収まるかというと、ことはそう簡単ではありません。日本の貿易収支悪化という中期的で構造的な材料もあるからです。この中期的な材料も含めて円安材料がいつ解消するかというと、それは少なくともウクライナ侵攻に関わるエネルギー確保の問題に見通しがついたころだろうと思われます。


ユーロドル ・・・

ジャクソンホールでの発言にあったように、欧州中央銀行(ECB)も金融引き締めスタンスで物価高に臨んでいますが、米FRBの利上げスタンスの影響力には及ばないようです。それに先月も書きましたが、以下の弱い材料もあります。当面は米ドルに対して弱い水準で推移しそうです。

· エネルギー問題 :ロシアからの天然ガス供給遮断リスクが当面続くこと。

· 南欧の財務問題 :長引く新型コロナの影響で疲弊していた経済に、ウクライナ問題が追い打ちをかけ、イタリアなど南欧諸国の国際スプレッドは拡大傾向。


【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. ウクライナ情勢:長引くとエネルギーを依存するユーロにとって売り材料、資源高を通して円にも売り圧力。

2. 米FOMCの金融政策:利上げ実施状況と大胆な利上げ幅調整が、円売り圧力・ユーロ売り圧力になる。

3. 米経済指標 :雇用統計などから米経済が大規模な利上げに耐えられるか判断。不安あれば米ドル売り。

4. 米中間選挙 :米政権の内政向き要素も含むとみられるFRBのタカ派スタンス材料が、選挙後にはげる。


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. ウクライナ情勢 :終結の形によっては、中期的にも影響。

2. 貿易収支:エネルギー価格高騰して高値にとどまるなら、円やユーロの売り材料。

3. 米インフレ対応状況と米経済指標 :利上げ頻度と利上げ幅の判断の一つとして注目。

4. 原油価格とOPECの生産方針 :現状の各国経済の下押し要因の一つとして注目。増産に応じるなら中期相場に影響。


【長期的な材料(数年)】

1. ウクライナ侵攻に伴う世界経済の分断 :グローバル依存関係の破綻により、エネルギーや食料を中心にコスト押上げ、各国の貿易収支バランスが変化する。特に日本は悪化による円安リスク。

2. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。

3. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

4. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上


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