• 金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2020年3月末現在)

【米ドル】・・・対円

3月乱高下しました。

前月、新型コロナウイルス感染拡大リスクから、リスクオフ通貨としての円が買われた動きを受けて、ドル軟調の108円台半ばで始まり、3日の米FRBの利下げにより101円台前半まで急落しました。

その後は、いったん108円台まで戻しましたが、15日のFRB再利下げに再び105円まで売られました。

しかし、その後は世界的なドル資金への需要から111円台まで値を戻しました。コロナウイルスの脅威が一旦は極端なドル安円高に振れ、その後は同じ材料で逆に、一転してドル高円安に振れたのです。同じ材用でどうして両極端な結果をまねいたのでしょう。それは予想の項目で述べます。

結局月末は、FRBのドル資金供給策のため107円台まで落ち着いて月超えしました。

【ユーロ】・・・対米ドル

FRB利下げや原油価格急落からユーロは1.15近辺まで高騰したあと、米ドル流動性需要の高まりに1.06台まで反落しました。この動きは円の対ドル相場と同じです。月末もドル需給が落ち着いて1.09台で月を越しています。

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

これまでドル円相場を動かす材料としてみてきのは、米中貿易摩擦やEUの政治的混乱などでしたが、ここへきて新型コロナウイルス一色となりました。しかし、既述のように、この材料が円高に触れたり一転して逆に円安に触れたりしています。同じ材料なのに。これには次のような背景が考えられます。

いわゆるリスオフ通貨としての円は、実は信頼できる通貨としての評価ではなかったということです。その理由はこうです。

昔から円金利はドルに比べて低く推移してきました。このため、リスクを取って世界のいろんな事業に投資しようとする人々は低金利の円を借りてこれをドルにノンヘッジ変換し、投資に回してきました。これを円キャリーといいます。だから、世界が不安になってリスクを取るのを止めにしておこうとなると、投資を引き上げて円建て債務を返済するために円を買い戻したのです。それがいつのまにはリスクに強い円という評判となったのです。円の信用力というよりは、他通貨の信用不安が円高を呼んだといえそうです。

一方、本当に世界を揺るがす不安が広がると、手元に流動性を確保したくなります。流動性の高いハードカレンシーは米ドルなので、米ドル買いに走るというわけです。トイレットペーパーを買いに走り回るのと似ていますね。

だから、すこし安心すると必要以上の手元流動性は手放すようになるため、このウイルス感染に一定の目途がたった段階では、ドルが売られて円が値を戻すことになると予想します。

問題はその後です。

今回の感染拡大で萎縮する経済を支えようと各国は大規模な財政出動を実行しますので、感染拡大が落ち着くころにはどの国も莫大な借金を抱え、大幅な財政赤字を抱えることになるでしょう。

そうなるとまず起こるのが、政府によるクラウディングアウト(民間への資金供給を締め出す)。金利は高騰して、金利相場の理屈から、高金利通貨が買われるという動きに繋がります。高騰しやすいのは米ドルなので、ドル円相場はドル高円安に振れるでしょう。ただし、ファンダメンタルズという視点ではドルが信用力を失う可能性もあります。

さて次に、中銀による国債引き受けが蔓延するかもしれません。日銀の場合は既にそうみられている可能性があります。古来、中銀が国の借金を引き受けると超インフレを招きます。インフレ通貨は売られるので、為替相場に影響を及ぼします。日米どちらにそのリスクがあるかというと、日本ではないでしょうか。この場合も円安です。

ただ、過去歴史の反省から、この辺りは極端な事にはならずにうまくコントロールされるのではないかと思います。

他に、こんな動きも考えられます。経済の国際的な相互依存リスクを認識するようにって、海外直接投資や貿易取引が縮小するという動きです。どの国も多少の経済合理性を犠牲にしてでも、食糧安全保障や生活必需品の自給など社会的価値をより重視しようと考えるようになるでしょう。為替取引量そのものが縮小するかもしれません。

ユーロドル ・・・

新型コロナウィルスの影響はユーロでも同じです。

ただし、EUの場合は、上に書いた社会的価値重視の動きによる影響の大きさを考えた方がいいかもしれません。現に、コロナ対策としてEU各国は国境往来を制限しています。さらに、相互依存リスクへの対策を検討するようになると、EUの結束そのものも揺るがすかもしれません。

EU内での自給力を高めることで、EU外への依存リスクを下げようという動きになればいいのですが、いままでの南欧問題や独経済に頼る傾向などを思うと、簡単ではありません。社会的政治的なファンダメンタルズからみたユーロ通貨の信用力が試される場面となるでしょうね。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 新型コロナウイルス感染爆発によるドル流動性需要の高まり : リスク高いほどドル高

2. 米FOMCの金融政策方針の変化:コロナウイス対策としての利下げ状況~金利差縮小から円高

3. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向→心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルス対策としての各国の金融財政政策の効果とその後の影響 :民間への支給供給締め出し効果から金利上昇し、日米金利差拡大するならドル高

2. 米大統領選挙:新大統領の経済政策に注目(貿易、財政など)

3. 米中貿易戦争や政治リスクの高まりに伴う世界景気減速懸念:懸念高まれば円買い材料に

4. 欧州中央銀行ECBが金融政策の検証を開始(2020年2月)、検証結果が出される今後の金融政策スタンスに注目

【長期的な材料(数年)】

1. 新型コロナウイルス終息後の国際経済相互依存リスク回避の動き:対外直接投資や貿易取引縮小し為替裁定取引縮小するため金利差等による投機行為が少なくなり、より実需に影響を受けるように

2. 今後の政治情勢で、国際的な分断が進行するなら、貿易の委縮に伴って世界経済が停滞し、円キャリー取引巻き戻しによる円高

3. トランプ政権の経済政策の好効果後の悪影響や反動(保護貿易によるコストプッシュインフレ、大型減税に財政圧迫)の相場への影響

4. 英のEU離脱後の状況:経済的ダメージが予想より小さければEU体制に悪影響。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

以上

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