【米ドル】・・・対円
4月のドルは少し弱含みました。
前月にドルを急激に押し上げた要因は、米金利の上昇とリスク選好でしたが、4月はこの2つが緩んで上昇したドルが少し戻ったという状況です。
2つの要因のうち、米金利については、FRBが金融緩和策を継続する姿勢を崩さなかったことから急上昇していた金利が下落に転じたことがあげられます。前月の上昇圧力は雇用統計など良好な米経済指標の発表やバイデン政権の2兆ドルの刺激策に期待する面がありました。しかし4月は雇用統計は引き続き良好であるものの、FRBがこれに水を差すように、「まだまだ緩和を続ける」と緩和姿勢をくずさなかったのです。
要因の2つ目であるリスク選好機運の変化は、やはり新型コロナが要因です。4月は米国内でワクチン接種が予定より順調に進んでいることで、経済活動が早く戻るだろうとの期待からリスクをとって投資しようとするむきのドルへの需要がドルを押し上げていました。4月は米国内はともかく、世界を見るとインドの感染が急拡大していることや変異型が猛威を振るう勢いであることから先走ったリスク選好をすこし後退させる結果となったのです。
結局、月初111円弱で始まった後107円台半ばまで緩み、109円台前半で終わりました。
【ユーロ】・・・対米ドル
4月は上昇しました。
月初2.17台で始まった後、欧州中央銀行ECB理事会が緩和姿勢を示しましたが、大方の予想通りであったことから、ユーロを押し下げる要因にはならず、じりじりと上昇し続けて1.21台の前半まで値を伸ばしました。月末は少し戻して1.20台で終えています。
【今後の短期~長期予想】
ドル円 ・・・
引き続き米FRBの金融政策の姿勢に注目です。雇用統計など米経済指標は良好でワクチン接種も進んでいますが、マイナス要因として以下の点に注意しておく必要がありそうです。
バイデン政権が進める刺激策の財源 :毎年この時期になると話題に上るのが財務省の債務上限の適用停止期限です。今年も7月末にそれが到来しますが、2兆ドルの刺激策を推進するためには財源が必要であることからこの適用停止がうまくいかないと経済回復への期待も後退してドル惜しげ要因が弱くなります。
増税への懸念 :これもバイデン政権が進める刺激策とからみますが、これには共和党が大反対。仮に増税が実現して財源確保ができたとしても、今度は逆に増税自体が成長を妨げる要因となるリスクがあります。
米経常収支 :世界経済が停滞したまま、米経済だけが回復して好調を呈する場合、国内需要が活発になって貿易赤字が膨張し、経常収支赤字通貨の減価法則から米ドルの下押し圧力になる。
以上から米ドルがこのまま110前後の水準を維持するのは困難と予想されます。
105円前後が着地点ではないでしょうか。
ユーロドル ・・・
米ドルがこのまま高値圏を維持することが予想しにくいことから、ユーロに対しても弱含むことが予想されます。
一方、ユーロ固有の要因からは新型コロナ、ユーロ圏経済の両方で少しずつ好転しつつあることから、ユーロドル相場はしばらく堅調に推移するものと思われます。
【短期的な材料(1ヶ月前後)】
1. バイデン政権が進める刺激策の財源確保 :見通しが立たない場合はリスクオフ機運からドル売り
2. 米FOMCの金融政策:雇用統計など好結果続けば徐々に緩和解除(テーパリング)し日米金利差拡大からドル高円安
3. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り
4. バイデン新政権の1.9兆ドル財政政策の進行状況:進む兆しなら米金利上昇しドル高(但し財源確保リスクに注意)
5. 欧州中央銀行(ECB)の資産買入(PEPP)と金利政策:買入・緩和維持で短期ではユーロ買い
【中期的な材料(数ヶ月)】
1. 新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。
2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り
3. バイデン新政権の1.9兆ドル財政政策の進行状況:進む兆しなら米金利上昇しドル高(但し財源確保リスクに注意)
4. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による世界景気減速懸念:懸念高まれば中期では円買い材料に(長期では異なる)
5. 日本の経常収支黒字拡大状況:拡大継続なら対円実需から円高新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。
【長期的な材料(数年)】
1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。
2. 米大統領に就任するバイデン氏の政策により増税、財政出動が多くなれば長期金利が上昇して米ドル堅調
3. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。
4. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)
5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。
6. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)
以上
Commentaires