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  • 執筆者の写真金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2020年2月末現在)

【米ドル】・・・対円

2月は再び円高へ向きました。

108円台半ばで始まったドルは、中旬までは110円近辺をうろうろし、その後一旦112円台前半まで伸びましたが、その後は107円台半ばまで急落して月を越しました。

112円台まで伸びた(円安)理由は新型コロナウィルスです。中国を調達元としている産業の産業生産停滞やインバウンド目当ての産業の停滞のほか、国内でも感染が広まり、経済の先行きに不安が広がっています。昨年第4四半期GDPは年率▲6.3%に落ち込みましたが、コロナウィルスの影響によってここからの回復も見込めないと、少々弱気になっているようです。

では下旬の突然の急落(円高)の原因はなにかというと、それもコロナウィルスです。はじめ米国での感染は広がらないと見られていたことが米経済への影響も限定的だとの半田になってドル高を誘ったのですが、そうではなかったということです。感染経路の見えない感染が発生して株価が急落し、これを受けて、為替もリスクオンのドルから離れ、リスクオフの円に回帰してきました。トランプ大統領の「問題ない」という発言も、~いつもそうですが~なんの根拠も裏付けもないものです。2月28日の米FRB議長の声明では、3月の利下げを示唆するものとなり(実際その後下げた)、市場はやはり予想より影響は大きそうだと理解したのでしょう。


【ユーロ】・・・対米ドル

2月は往って来いの展開でした。

1.10近辺で始まったユーロドルは、じりじりと値を下げ、20日には1.07台後半まで下げましたが、その後は急回復して月初の1.10を超え、1.11に迫る水準で月を超えました。

じりじりと下げた要因は、ユーロ圏経済を牽引してきたドイツ経済の停滞や政局の不安など指摘されていますが、ユーロ固有の要因というより、基本的には米ドルが堅調だったからというのが理由だと思います。ユーロ圏は中国経済に相当程度依存していますので、新型コロナウィルスの影響を受け、日本と同じように、対米ドルで値を下げていったというところです。

同様に、月末にかけて米株価急落に伴う米ドル急落で、これもまた円と同じように、買われたということです。ただし、円が持っているリスクオフ通貨としての強みはユールにはないため、月初の水準に戻るのが精いっぱいで、それ以上の勢いを伴ってどんどんユーロ高になるという状況にはなりませんでした。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

2月のドル円相場は、新型コロナウィルスへの抵抗力という点で、2つの材料を見せました。

1つは、中国に近い日本の経済萎縮から円への信用力に疑念が生じ、ドル高円安になる材料。あとの1つは、そうは言っても影響が世界に広がるなら経済力は不安だが相対的にリスクオフの円としての評価が戻ってくるためドル安円高になるという材料です。

世界の経済が委縮するとリスクオフの円高のほかに、金利要因も出てきます。実米FRBは利下げし、日米金利差が縮小します。縮小すると、相対的に金利が高かった米ドルに資金が流れていたものが、流れる理由を失い、円に返ってきます。その上、どうしても米国と比べても弱っちい日本経済にはすぐに設備投資減少や個人消費減退という形で影響を受けやすく、影響を受けるとデフレの進行が著しくなり、表面上の日米金利差幅よりさらに縮小するのです。

やっぱり円高圧力は残るでしょう。

米大統領選挙については、トランプ再選では市場が安心して影響小さく、民主党が勝つならトランプ相場が色あせて停滞すると予想し、民主党でサンダーズならトランプ勝利、バイデンならわからないというのが多くの見方です。

しかし、これはやってみないと分からない。誰が勝利しても、貿易が活発になるならドル高、財政が膨張して破綻リスクが大きくなるならドル安という視点で見るといいのではないでしょうか。


ユーロドル ・・・

新型コロナウィルスの影響は当面続くと見られるほか、仮に米FRBの利下げによってドルが売られてもそれが全部ユーロ買いの圧力に変わるということもないと思われるので、ユーロは引き続き弱含みそうです。

金融政策方針や政治の方向も不透明なままなので、為替相場の変動材料としてどのように解釈していいのか分かりません。

金融政策では、欧州中央銀行ECBが再緩和に動くという見方があるものの、就任間もないラガルド氏が、しばらくは金融政策の検証を行うと言っており、検証した結果がだされないと政策方針として打ち出されないでしょう。だから今はまだわからない。

政治では、英国のEU離脱問題はまだ不透明だし、中道右派が苦肉の策として極右と連携したドイツの政局も、こ左派連合政権の可能性打ち消しに成功したわけではありません。まだ判断できません。


【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 新型コロナウィルスへの対応状況:中国経済の萎縮から世界経済への影響を懸念

2. 米中貿易摩擦 :見通し悪ければ、中国経済の萎縮、世界経済後退懸念から円(リスクオフ通貨)買い進行

3. 米FOMCの金融政策方針の変化:利下げに転じ、その後の政策の方向性にどのような影響を及ぼすか注目

4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向→心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルスによる世界経済の萎縮により、リスクオフ通貨円の対ドル強含み、中国経済に依存するユーロの対ドル・対円弱含みにつながる可能性あり

2. 円投による外債投資・外貨投資の積み上がり:相場動く気配により円高リスク。

3. 米中貿易戦争や政治リスクの高まりに伴う世界景気減速懸念:懸念高まれば円買い材料に

4. 欧州中央銀行ECBが金融政策の検証を開始(2020年2月)、検証結果が出される今後の金融政策スタンスに注目

5. 米政府が注目する円の実質実効レートの動向 :貿易赤字解消を目的に米が割安円を指摘

6. 米大統領選挙:新大統領の経済政策に注目(貿易、財政など)


【長期的な材料(数年)】

1. 今後の政治情勢で、国際的な分断が進行するなら、貿易の委縮に伴って世界経済が停滞し、リスクオフ通貨円が相対的に強く

2. トランプ政権の経済政策の好効果後の悪影響や反動(保護貿易によるコストプッシュインフレ、大型減税に財政圧迫)の相場への影響

3. 英のEU離脱後の状況:経済的ダメージが予想より小さければEU体制に悪影響。

4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上

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