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  • 執筆者の写真金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2020年4月末現在)

【米ドル】・・・対円

4月は少し落ち着きました

3月は101円台~111円台の幅で乱高下し月末は107円前半で落ち着きました。4月はこの水準から始まり、一旦109円台前半で強含む場面もありましたが、徐々に下げ107近辺で月を越しました。

変動材料は専ら新型コロナウイルス禍にかかるものです。

日銀は27日の政策決定会合で、続けてきた異次元緩和策をさらに拡大する措置し、先月利下げした米FRBは29日のFOMCで、この政策を維持していくことを決定しました。

【ユーロ】・・・対米ドル

4月はあまり動きませんでした。

平和で何も材料がないから動かなかったのではなく、売り圧力と買い圧力が拮抗していて一方方向には動きにくかったということです。

月初は比較的高値の1.10台前半で始まったあと、すぐに1.08ドル台まで売られました。ドルが他通貨に対して買われたタイミングでユーロに対しても買われたのです。

月の半ばにかけては、新型コロナウイルス感染の拡大が少し鈍化したことから、逆に1.09台後半まで強含みました。

しかし、後半は、ユーロ圏PMI(Purchasing Manager’s Index~購買担当者景気指数)の悪化などを受けて再び売られ、1.07台後半まで下げたあと、結局1.09台で月末を超えました。

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

しばらく新型コロナウイルスへの不安と各国当局の政策効果が相場を雨後すことになりそうです。ではどう動かすのでしょうか。

まず、感染拡大への不安です。緊急に必要な物資をいつでも調達できるよう、各国各企業は手元流動性を潤沢に保とうとするから、流動性への需要が高まる。各国共通の流動性は米ドルですから、円売りドル買い圧力が強まります。先月か先々月書いたように、「リスクに強い円」は神話に過ぎなかった。やはり有事に強いのは米ドルです。

この点では、米ドルが円に対して強いというより、あらゆる他通貨に対して強いというこであり、円もドル以外の他通貨に対しては米ドルほどではないけど相当程度強いと言えます。この材料で気にかかるのはドル円相場ではなく、ドル対他通貨、とくに新興国通貨が資本流出とともに大きく売られるリスクに晒されて点でしょう。

さて、有事のドルだからといって、どんどんドル高に行くわけでもありません。日米の実質金利では、緩和余地の小さい円は、いくら日銀が頑張っても、相対的にFRBがドルの実質金利を下げる効果より見劣りしてします。日米の金融当局が同じように緩和方向を続けるなら、金利相場からドル売り円買い圧力が強くなるのです。

材料が効く時期にも目をやる必要があります。緊急時の流動性確保に目途がつくまではドル需要が強いが、目途がついて、しかも経済活動への規制が徐々に解除されてくるにしたがってドル買い圧力も和らぐのではないでしょうか。それに代わって、今度は金融政策効果としての金利平価による円買いが強くなってくるでしょう。

したがって、まずドル高、そしてしばらくすると円高へというシナリオです。短期から中期のスパンでみます。では長期ではどうかというと、それは経済の回復力と財政破綻リスクの強度で予測できます。日米の財政破たんリスクは、ちょっと前までは日本が心配でしたが、最近はトランプ氏のおかげで米国も劣らぬくらい心配になっています。

一方、経済回復力では、最近までの実績からみると、日本より米国かもしれませんね。

ユーロドル ・・・

欧州中央銀行のラガルド総裁も「できるはなんでもやる」と言い、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける経済に対しては最大限の金融緩和策を採る覚悟を示しています。

この点、日銀や米FRBとスタンスは同じですが、ユーロの場合は、これに加えて、南北問題があります。各国とも救済や刺激策として大規模な財政出動を余儀なくされ、西米欧では24兆ドルもの規模に達すると言われています。

そうなると、困るのがイタリアやギリシャ、スペインなどの南欧諸国です。一昔前はこれらの南欧諸国の財政悪化から国債利回りが高騰し、ユーロ通貨の信用力を損なった時期がありました。このときの状況が再び現れ、既に国債利回りが上昇しています。

この先、ユーロは米ドルや円に対して弱いと見るべきでしょうね。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 新型コロナウイルス感染爆発によるドル流動性需要の高まり : リスク高いほどドル高

2. 米FOMCの金融政策方針の変化:コロナウイス対策としての利下げ状況~金利差縮小から円高

3. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向→心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルス対策としての各国の金融財政政策の効果とその後の影響 :民間への支給供給締め出し効果から金利上昇し、日米金利差拡大するならドル高

2. 米大統領選挙:新大統領の経済政策に注目(貿易、財政など)

3. 米中貿易戦争や政治リスクの高まりに伴う世界景気減速懸念:懸念高まれば円買い材料に

4. 欧州中央銀行ECBが金融政策の検証を開始(2020年2月)、検証結果が出される今後の金融政策スタンスに注目

【長期的な材料(数年)】

1. 新型コロナウイルス終息後の国際経済相互依存リスク回避の動き:対外直接投資や貿易取引縮小し為替裁定取引縮小するため金利差等による投機行為が少なくなり、より実需に影響を受けるように

2. 今後の政治情勢で、国際的な分断が進行するなら、貿易の委縮に伴って世界経済が停滞し、円キャリー取引巻き戻しによる円高

3. トランプ政権の経済政策の好効果後の悪影響や反動(保護貿易によるコストプッシュインフレ、大型減税に財政圧迫)の相場への影響

4. 英のEU離脱後の状況:経済的ダメージが予想より小さければEU体制に悪影響。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

以上

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