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  • 執筆者の写真金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2020年6月末現在)

【米ドル】・・・対円

6月は上下したものの結局は月初水準に戻しました。

107円台半ばで始まり、月初の米雇用統計発表を受けて109円台後半までドルが上昇しました。

しかし、その後は不安材料が重なって、下旬には106円台前半まで弱含みました。不安材料とは、フロリダなどで感染者数が再び急増して株価も大きく下げたこと。FOMCは政策の据え置きを決定し、ドルを支える新たな材料が出てこなかったことなどです。

結局、月初の水準近い107円台後半で月末を超えました。

【ユーロ】・・・対米ドル

6月は小幅な動きながら堅調でした。

1.11台前半で始まったあと、前月にメルケルとマクロンが提案したEU復興基金への期待と米FRBの緩和策継続により値を上げ、1.14台前半をつけました。

その後は、復興基金提案に対して慎重な意見が出されるなど協議が難航したことから再び1.11台まで売られたものの、全体的に前月に比べて概ね堅調に推移し、1.12台で月末を超えました。

【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

引き続き、先月示した3つの材料が方向性を決めます。

➀ リスク回避先としての円買いはどうか。

② 流動性確保を目的としたドル買いはどうか。

③ 各国金融政策と金利動向はどうか。

財政出動余地の少ない日本に比べて、まだある米ではインフラ投資などの計画を練っており、これに対する期待からリスク回避先の円買い圧力は弱まるでしょう。この点ではドル高。

一方流動性確保を目的としたドル買いは、南米など新興国での感染拡大が深刻なことから、進むと見られます。

また、金融政策では日銀に緩和余地が残されていない状況下、米FRBの緩和スタンスが当面続くとされており、この点は金利差縮小から円高ドル安の圧力がかかりそうです。

以上から、3つの材料がせめぎ合って微妙なバランスをとりながら、どちらかというと円高方向を予想します。

ユーロドル ・・・

メルケルとマクロンが共同提案した復興基金は、EUが長期的に安定存続するための懸案である財政統合の第一歩であることから、とても異議のある提案ですが、それだけに簡単には進みません。協議が難航することは予想されたことです。

仮に、合意されるとなれば短期的はもちろん長期的にもユーロ通貨は安定して堅調に推移すると思われます。しかし、現時点でそれを前提とするのは時期尚早です。

コロナの第二波が懸念されながらも積極的に経済活動を取り戻す動きがあることから、短期ではドルに対して概ね堅調に推移し、長期ではまだ方向を定めきれないというところです。

【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 新型コロナウイルス感染爆発によるドル流動性需要の高まり : リスク高いほどドル高

2. 新型コロナウィルス対策からの経済再開 :流動性確保緊急性低下からドル売り、円など他通貨買い

3. 米FOMCの金融政策方針の変化:コロナウイス対策としての利下げ状況~金利差縮小から円高

4. 中国はじめ新興国の経済失速、株価動向→心理的な不安がリスク回避行動となり、円買いに流れる。

【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルス対策としての各国の金融財政政策の効果とその後の影響 :民間への支給供給締め出し効果から金利上昇し、日米金利差拡大するならドル高

2. 米大統領選挙:新大統領の経済政策に注目(貿易、財政など)

3. 米中貿易戦争や政治リスクの高まりに伴う世界景気減速懸念:懸念高まれば円買い材料に

4. 欧州中央銀行ECBが金融政策の検証を開始(2020年2月)、検証結果が出される今後の金融政策スタンスに注目

【長期的な材料(数年)】

1. 新型コロナウイルス終息後の国際経済相互依存リスク回避の動き:対外直接投資や貿易取引縮小し為替裁定取引縮小するため金利差等による投機行為が少なくなり、より実需に影響を受けるように

2. 今後の政治情勢で、国際的な分断が進行するなら、貿易の委縮に伴って世界経済が停滞し、円キャリー取引巻き戻しによる円高

3. トランプ政権の経済政策の好効果後の悪影響や反動(保護貿易によるコストプッシュインフレ、大型減税に財政圧迫)の相場への影響

4. 英のEU離脱後の状況:経済的ダメージが予想より小さければEU体制に悪影響。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)

6. 欧州コロナ対策復興基金の設立の行方 :超長期的にユーロの財政統合を占う

以上

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