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  • 執筆者の写真金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2021年11月末現在)

【米ドル】・・・対円

11月は錯綜しました。

月初114円近辺で始まり112円台後半までドルが売られたあと、月中旬は114を挟んで数十銭の間を上限しました。これが下旬に差し掛かったところでどんどん買われ今年の最高値115円台前半まで伸ばした後、今度は逆に急落しました。結局113円台前半で月末を超えています。

ドルが変われた材料は米FRBの金融政策正常化見通しです。

この材料は結構息が長く、昨年末の103円台からこの水準までドルが買われてきたのは主としてこの材料によります。

背景には米経済の持ち直しから緩和措置をそろそろ緩めようとの動きで日米金利差が開くから金利高のドルを買う流れとなってきました。10月には、いよいよ高インフレの懸念からテーパリングを早めるとの方向に向き始めて、この流れが加速しました。11月のドル買いもこれを引っ張った格好です。

これに対して他方の円買いはコロナです。コロナが収まって経済が復調するとみるからインフレになるのですが、この流れにときおりコロナが水を差します。11月前半でのドル売り円買いは欧州での深刻なコロナ感染再拡大。月末にかけてのドル急落円買いはオミクロン株です。


【ユーロ】・・・対米ドル

11月は下落しました。

昨年末の1.23近辺の水準からじりじりと値を下げていたユーロは10月に底を打ったように見えましたが、そうではありませんでした。月初1.16で始まり、どんどん値を下げ、24日に今年の最安値1.11台後半をつけました。月末は少し戻して超えていますが。ドル円が上下したのと比べてユーロは一方方向でした。

これはコロナがドル円に関してはドル売り円買いになったのとは対照的に、ユーロドルに関してはユーロ売りにつながったからです。

もともと中期的な材料としてドル円で見たのと同様、米FRBの金融政策正常化がありました、これはユーロドルでもドル円と同じ流れをもたらし、ドル買いユーロ売りの傾向が続いていました。そこへコロナで追い打ちをかけた格好です。日本では収束気味ですが、欧州では感染拡大が深刻です。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

これからも、経済の回復とインフレ対応として米FRBの金融政策正常化が進む方向にときおりコロナが水を差すという展開が続きそうです。

原油高もインフレに拍車をかける。原油高は悪いインフレにつながりますが。それでも需要が落ち着けばインフレにはならないはず。そういう意味では悪いインフレでも米FRBの金融政策正常化は進められるでしょう。今週も利上げが早まるだろうという観測が出ていました。

一方の日銀は、相変わらず最大の緩和策を止めるつもりはなさそうです。そうなるとますます日米金利差が開いてドル買い円売りになるだろうと予測しがちですが、それも限定的だと思われます。

何故なら、1つに、日銀がいくら緩和を続けても、実質金利は高いままだからです。高いままなので日米金利差はそんなに開きません。

次に、米FRBのテーパリングは相当量を市場が織り込んでおり、現状で十分割高な水準にあるからです。先月も書きましたが、超長期的な相場予測に有効な購買力平価は現状の実勢相場を相当量下回っています。先月の日経に、現状の購買力平価は実勢相場とほぼ同準にあるという記事を見つけて卒倒しました。私の試算では100円を切っています。

この2つの材料を考慮するなら、むしろドル買いが限定的というより、むしろ下を向いていると言った方が適切かもしれません。


ユーロドル ・・・

欧州中央銀央(ECB)は現状の物価上昇は一時的であるとみているので、パンデミック緊急対策であるPEPPは来年3月に終了する見込みであるものの、本体の緩和策を止めるつもりはなさそうです。

日銀も緩和策を止めるつもりはありませんのでその点では円もユーロも同じように見えますが。違うのは円の実質金利は低いままだが、欧州はそうでもないというところです。インフレ率は目標の2%は下回るもののきちんとそれなりのプラス値を実現しています。

だから、日米金利差が思うほど縮まらないと予想されるのに対し、ユーロドル金利差はしっかり開いていくと予想されます。そうなるとユーロは当面下を向いたまま動くのかもしれません。


【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 米FOMCの金融政策:11月FOMCはテーパリング開始で決定。その後2022年央に終了して利上げする動きとの市場予想を変える材料が出されるか。

2. コロナのオミクロン株による感染再拡大:まだ不透明だが経済への影響が大きいとリスク回避の円買い。但し以前ほど円のリスク回避機能は働かない。

3. 米インフレの予想の変化:インフレそのものは中長期材料だが、その予想は短期の相場変動要因。


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 米FOMCの金融政策:11月FOMCはテーパリング開始で決定。その後2022年央に終了して利上げする動きとの市場予想を変える材料が出されるか。

2. 米インフレ動向 :長期化するならドル安、ユーロ・円高。

3. 米国の経常収支赤字:米バイデン政権の政策により総需要拡大して貿易収支、経常収支ともに赤字幅が拡大するなら、ドル安圧力。

4. アフガニスタン情勢の難民などの混乱:欧州が影響受けやすく、ユーロの信用度に悪影響を及ぼす可能性。

5. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による世界景気減速懸念:懸念高まれば中期では円買い材料に(長期では異なる)


【長期的な材料(数年)】

1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。

2. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。

3. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)

4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上

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