【米ドル】・・・対円
1月はドル高円安方向でした。
103円台前半で寄り付いたあと年初休み明けには102円台半ばまで下落しましたが、その後は上昇しました。その主な要因はバイデン新政権の経済運営への予想です。大統領就任には問題ありませんでしたが、同時に行われた議会選挙で最後まで決着がついていなかったジョージア州の決選投票の結果、予想に反して2議席とも民主党となり、上下院とも民主党の主導権が確保されたことで、バイデン政権の積極的な財政政策が進めやすくなったのです。
予想される積極財政により長期金利が上昇し始め、日米金利差が広がるというが相場への影響です。
これまでのドル安円高の大きな要因は米金融緩和によって日米金利が縮小し「金利裁定理論」から円高になるというものでしたが、これが変わったということです。
ただ、今後の予測となると材料は1つだけではありません。後述します。
【ユーロ】・・・対米ドル
1月は少し下落しました。
紗年春以降のユーロ堅調の傾向を受け、比較的高い水準の1.22台半ばで始まったあとも1.23台半ばまで伸ばす堅調ぶりでしたが、ドル円の材料同様、米議会選挙の結果(ジョージアの結果、上下両院で民主党主導)を受けた米長期金利上昇によって売られる方向に変わりました。
1.20台半ばまで下落し、結局1.21台前半の水準で1月末を終えています。
【今後の短期~長期予想】
ドル円 ・・・
1月は積極的な財政出動への期待から長期金利上昇し始めたことが相場上昇(ドル高円安)の要因でしたが、材料はこれだけではありません。当面の材料をまとめると以下のようになるでしょう。
上昇(ドル高円安)材料
➀ 米の積極的な財政出動
② 米FRBの金融緩和政策のテーバリング(徐々に緩和を卒業する)
下落(ドル安円高)材料
➀ 米FRBの金融緩和政策継続 :雇用統計などではまだまだ回復は遠い
② 円への実需 :経常黒字化してその幅が拡大している
③ 日本国内のデフレで円の購買力平価情報 :コロナ禍影響で他国より回復にぶい
これに加えどちらに転ぶか分からないというのが新型コロナワクチンの行方です。接種が進んで効果があらわれるなら、米FRBの緩和も継続の重要性は薄れて日米金利差が拡大してドル高円安。
ユーロドル ・・・
今後の行方を決める材料として、米FRBの緩和策継続やバイデン政権の積極財政の進捗状況があるのはドル円相場の予想と同じです。
ユーロ固有の短中期材料としては、以下の2つあるでしょう。
➀ ECBの緩和スタンス~パンデミック緊急資産購入プログラム(略称PEPP)
② コロナ終息状況(英国型の感染拡大押さえられるか) :終息ならユーロ買い
特に➀は解釈が分かれます。PEPPが進むなら経済回復を促してユーロの信用につながるという見方と、進めば実質金利低下して米との金利差が広がってユーロ弱含むという見方です。どちらが強く出るかはちょっと難しい。また、PEPPは各国国債の金利差を考慮して進められることから、独と南欧の開きが拡大するならPEPPが進まないというリスクもあります。
超長期的な材料として、EUそのものの脆弱性を忘れてはいけません。
➀ 財政統合の行方(昨年の欧州復興基金の行方を含む) :統合できればEU経済結束しユーロ価値高まる。
② 貿易依存度高いEU経済と対中関係 :西側諸国の連携による対中対立深まればユーロの価値損なう
【短期的な材料(1ヶ月前後)】
1. 米FOMCの金融政策方針の変化:コロナウイス対策としての利下げ状況~金利差縮小から円高
2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り
3. バイデン新政権の議会運営状況と積極財政政策の行方:進む兆しなら米金利上昇しドル高
4. 欧州中央銀行(ECB)の資産買入(PEPP)と金利政策:買入・緩和維持で短期ではユーロ買い
【中期的な材料(数ヶ月)】
1. 新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。
2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り
3. バイデン新政権の積極財政が進むか否か:上下院は民主党主導だが大規模財政に批判も→進なら米長期金利上昇しドル高円安
4. 米中貿易戦争や政治リスクの高まりに伴う世界景気減速懸念:懸念高まれば円買い材料に
5. 日本の経常収支黒字拡大状況:拡大継続なら対円実需から円高
【長期的な材料(数年)】
1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。
2. 米大統領に就任するバイデン氏の政策により増税、財政出動が多くなれば長期金利が上昇して米ドル堅調。
3. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。
4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。
5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)
以上