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  • 執筆者の写真金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2021年3月末現在)

【米ドル】・・・対円

3月は上昇しました。

月初106円台半ばで始まった後、コンスタントに伸ばし(ドル高円安)、1年ぶりに110円台に乗せました。

材料は以下の諸点です。

➀ 5日に発表された米雇用統計が市場の予想を上回る好結果であったことから米FRBが金融緩和措置を徐々に解除(テーパリング)していくのではないかとの観測。

② 1.9兆ドルの追加経済対策が承認されたことで、米経済の回復への期待が高またっことで、長期金利も上昇(1.7%)したこと。

③ 新型コロナワクチンの接種が計画以上を上回る速さ進んでいることから、米経済の正常化も近いとの期待が高まったこと。

17日に開催されたFOMCでは金融緩和継続が決定されましたが、3月はこれも含むドル安円高材料が影を潜めた感じです。


【ユーロ】・・・対米ドル

3月は下がりました。

月初1.20台後半で始まり、一貫して下落しまし、後半には昨年秋以来の1.17台前半で下落いたあと、結局1.17台後半で月末を超えました。

動きは丁度ドル円と同調しているようです。ということはユーロ固有の材料には乏しく、専ら米ドルの材料によって米ドルが対円と同様、対ユーロに対しても買われたということです。米ドルが買われた材料は前述の通りなので繰り返しません。

11日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会は、市場が予想したとおり、緩和姿勢に変更はありませんでした。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

4月2日に発表された米雇用統計は3月の発表に引き続生いて市場の予想を上回る好結果でした。非農業部門就業者数は前月から916千人も増加(市場予測は675千人)し、失業率は6.2%から6.0%と0.2ポイント改善しました。米経済は順調に回復しているといえるでしょう。米FRBが金融緩和の解除に踏み切らない理由としてあげているのが雇用情勢ですから、この理由がうすまればテーパリングを開始するかもしれません。

この点から、当面はドルが買われて円安になると思われます。

ドル高の材料を整理しておくなら、以下の3点でしょうか。

➀ 1.9兆円の財政出動による米経済回復への期待とそれにともなう米長期金利の上昇。

② 雇用統計の好結果を背景とするFRBのテーパリングの現実味。

③ 好調な株式市場とワクチン効果への期待を背景にしたリスクオフの動き。


ユーロドル ・・・

米ではワクチン接種が進んで米経済の正常化への期待が高まっているのに対し、欧州では変異株による感染再拡大が懸念されています。主要国での再ロックダウンやロックダウンの延長などあり、見通しが効かない状況になっているし、ECBのラガルド総裁の発言も悲観的です。

これに加え、今朝の日経新聞には気になる記事もありました。「欧州、国債帳消し論」です。日経新聞によれば、トマ・ピケティら仏独伊西など経済学者150人が共同で、新型コロナ対策で積み上がった借金(国債)を帳消しにする「徳政令」を求める意見書を発表したとここと。ラガルド総裁は一蹴しているものの、このような議論自体が国債の信用力を貶める原因になります。

国債が信用力を損なうと、各国は経済政策の財源を失うほか、金利が高騰してデフレをもたらし、経済回復が遅れてユーロ通貨への信頼も低下します。この先のユーロドル相場は下落に拍車がかかるかもしれません。


【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 米FOMCの金融政策:雇用統計など好結果続けば徐々に緩和解除(テーパリング)し日米金利差拡大からドル高円安

2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り

3. バイデン新政権の1.9兆ドル財政政策の進行状況:進む兆しなら米金利上昇しドル高(但し財源確保リスクに注意)

4. 欧州中央銀行(ECB)の資産買入(PEPP)と金利政策:買入・緩和維持で短期ではユーロ買い


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。

2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り

3. バイデン新政権の1.9兆ドル財政政策の進行状況:進む兆しなら米金利上昇しドル高(但し財源確保リスクに注意)

4. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による世界景気減速懸念:懸念高まれば中期では円買い材料に(長期では異なる)

5. 日本の経常収支黒字拡大状況:拡大継続なら対円実需から円高新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。


【長期的な材料(数年)】

1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。

2. 米大統領に就任するバイデン氏の政策により増税、財政出動が多くなれば長期金利が上昇して米ドル堅調

3. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。

4. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)

5. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

6. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上

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