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  • 執筆者の写真金森 亨

外国為替相場推移と今後の為替動向判断材料(2021年8月末現在)

【米ドル】・・・対円

8月のドル円は多少上下しましたが、方向感なく110近辺で落ち着きました。

月初109円台後半で始まった後、いつもの月初の米雇用統計発表を受け、市場予想を裏切る弱い結果であったことから108円台後半まで下げました。

しかし、その後は量的緩和を徐々に解除するテーパリングが年内にも始まるとの観測から反転して今度は110円台にのせる水準まで上昇しました。

そして中旬にかけてはいくつかの経済指標が低水準であることを背景に長期金利が低下すると再び109円台前半まで下落し、月末にかけては上下幅が小さくなって110近辺で月末を超えました。


【ユーロ】・・・対米ドル

8月は下に往って来いの展開でした。

1.18台半ばで始まり、米雇用統計発表で米長期金利が低下したことで少しだけ上振れ他あとは、徐々に弱含み、19~20日にかけては月間の安値1.16の半ばまで下落しました。

たいした材料があったわけではありませんが、米長期金利が再び上昇したことで金利相場になったという見方です。

その後は米経済指標のいくつから低水準だったことを材料に米長期金利が低下し、円が強含んだタイミングでユーロも値を持ち直し、そのまま月末にかけて1.18近辺に戻る展開となりました。


【今後の短期~長期予想】

ドル円 ・・・

8月27日のジャクソンホール会議でのFRBパウエル議長の講演内容が始まる前から注目されていました。で、当日は「経済が予想通り進展するなら、年内に資産を購入するペーシを縮小し始めるのが妥当である」と発言し、月中に知れたFRB副議長の講演原稿を裏付ける形となりました。いままでテーパリングがいつ開始されるのかという点で市場が様子を窺ってきましたが、ここで年内であるということがはっきりしたわけです。

ただ、市場はこれをほぼ完全に織り込んでいて、実際の講演でも相場への直接の影響はありませんでした。一部には来年とみられていたものが少しだけ早まったので、今後FOMCで年内の比較的早い時期に決めるなら長期金利が上昇してドル円相場も上昇する可能性があります。

しかし、早期すじのドル買い越しが相当進んでいることや、コロナ新株で感染が再び広がっていることなどから上値は重いものと予想します。

さらに、米国の貿易赤字拡大や実質実効相場の水準を考慮するなら、円が米ドルに対して相当安い水準に甘んじているという値ごろ感もあります。テーパリングを受けた米ドルの高値水準は既に織り込み済みでピークにあることを思うと、ドル円相場はむしろ円高方向への圧力が高いと思います。


ユーロドル ・・・

5月下旬に当面のピークを付けた後6月下旬に1.18台まで下げた後はこの近辺で多いな上限もなく推移しています。相場を動かす大きな材料はなく、せいぜいコロナの感染状況の影響程度でした。

そのコロナはワクチン接種効果が現れて経済活動も戻りつつあるようです。そうなると欧州中央銀行(ECB)の資産買入緩和策も米FRBと同様に徐々に解除に向かう可能性があります。ただし、ECBは現在の資産買入策(PEPP)に代るあらたな方法を検討してそちらに移行すると言っており、その行方が気になります。その場合、新たな方法が従来の方法より大胆に市場に流動性を供給する効果があるものなら、テーパリングを始める米ドルとの間で金利差が広がり金利相場からユーロが弱含むことも考えられます。いまの段階ではわかりません。

ユーロに関しては他に下記2つの材料があります。

· 一つはアフガニスタン情勢。難民受け入れなどの混乱という意味では、米への影響より、欧州への影響の方が大きいはずですが、ユーロへの信用度に悪影響を及ぼす可能性があります。

· もう一つは独の議会選挙です。これは当初有力とみられていた緑の党がここへきて勢いを失う中、各党が競り合う状況になってきています。どちらに転んでも相場への影響は大きくないと思います。

以上の諸材料から、ドルに対するユーロの相場は上値を試す場面はすくなく、どちらかというと弱い水準で推移すると考えます。


【短期的な材料(1ヶ月前後)】

1. 米FOMCの金融政策:緩和解除(テーパリング)が年内に始まるとの見方。市場は既に織り込んでいるかシナリオが狂うと逆に日米金利縮まらず逆に円高

2. バイデン政権が進める刺激策の財源確保 :見通しが立たない場合はリスクオフ機運からドル売り

3. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り

4. 欧州中央銀行(ECB)の資産買入(PEPP)と金利政策:買入・緩和維持で短期ではユーロ買い


【中期的な材料(数ヶ月)】

1. 新型コロナウィルス感染拡大・収束状況:収束長引けば各国金融追加緩和で金利差縮小から円高。

2. 新型コロナウイルスワクチンの接種状況と効果:接種進み効果認知できればリスクオフから米ドル・ユーロ買い円売り

3. バイデン新政権の1.9兆ドル財政政策の進行状況:進む兆しなら米金利上昇しドル高(但し財源確保リスクに注意)

4. アフガニスタン情勢の難民などの混乱:欧州が影響受けやすく、ユーロの信用度に悪影響を及ぼす可能性。

5. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による世界景気減速懸念:懸念高まれば中期では円買い材料に(長期では異なる)

6. 米政府が注目する円の実質実効レートの動向 :貿易赤字解消を目的に米が割安円を指摘


【長期的な材料(数年)】

1. コロナ後の環境変化:グローバル化修正、産業構造の変化、対中デカップリングなどに注意。

2. EU復興基金創設の成否:コロナ後のEU財政統合を占う大事な材料。

3. 米中新冷戦や経済安全保障への懸念による調達網再編に伴う貿易停滞や世界景気減速懸念:長期では日本経済停滞し円安材料(短中期では異なる)

4. 日本:貯蓄率低下・国債残高膨張による国債消化力低下⇒財政破綻⇒超インフレ(円安)。

5. 本邦人口減少が進行するなら人口オーナスによるデフレ効果で円高(購買力平価説)


以上

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